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建設業のAI導入が失敗する2つの理由|開発会社に聞く

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AIツールを導入したものの、いつの間にか誰も使わなくなった。建設業に限らず、多くの会社で起きていることです。

では、導入を請け負う側はその失敗をどう防いでいるのか。業務効率化システムとAIエージェントの開発、そして導入後の現場定着支援までを手がける株式会社MiToA(名古屋市)の代表取締役、井上貴雅氏に話を聞きました。

同社は特定の業界に限らず支援を行っており、以下の内容も業界共通の方法論として語られたものです。建築工事の会社が自社に当てはめて読める部分を中心にまとめています。

話し手について

項目内容
社名株式会社MiToA(ミトア)
所在地名古屋市千種区
代表代表取締役 井上 貴雅
事業業務効率化システム・AIエージェントの開発、導入後の現場定着支援、法人向けAI研修
体制少数の中核メンバーと、業務委託の開発者による編成
対象業界は限定なし。年商1億円規模から

「費用対効果が見えないなら、提案しない」

支援の入り口は、顧客からの相談を受けてのヒアリングです。ただし依頼された課題をそのまま受けるわけではありません。

「ヒアリングさせていただいた上で、その中で業務課題の潜在的なものを引き上げていく。その上である程度費用対効果が見込めるものに対して進めます」(井上氏)

そして次の一言が、同社の姿勢を端的に表しています。

「むしろ費用対効果がつかめないのであれば、やっても損するだけなので、あまり提案はしないですね」(井上氏)

AI導入を売る側が、効果の読めない案件を自ら断るという判断です。裏を返せば、効果が読めるかどうかを着手前に見極めることが、そのまま成否を分けているということでもあります。

1か月・30万円台からの「8割のデモ」で先に確かめる

同社の進め方で特徴的なのが、本開発の前にMVP(実用最小限の試作)を挟む点です。

「まずはMVPといった形で、1か月間でデモ版を8割ぐらいの完成度で作成して、それを見ていただいて、良いと思ったら導入するというイメージです」(井上氏)

このデモは無償ではなく、開発込みで30万円から50万円程度とのこと。ここに金額を置いている理由を、井上氏はこう説明します。

「大きな投資で、一気に500万円です、600万円ですという話ではなくて。まずは50万円でデモを見てみて、もし本当に費用対効果が合わないなと思ったらやめてもらえばいい、という形で、ひとつハードルを下げているというような」(井上氏)

数百万円規模の判断を、数十万円の判断に分割する設計です。導入する側にとっては、失敗したときの損失があらかじめ限定されます。

導入企業を4段階で見立てる

取材の中で最も体系的だったのが、AIエージェントを導入できる状態かどうかを段階で見立てるという考え方でした。井上氏は下から順に4つの状態を挙げます。

段階状態現場に現れる症状
1属人化している「これはベテランの○○さんしか分からないので聞いてください」という言葉が飛び交う
2業務フローがバラバラ同じ業務なのに、拠点や担当者によって進め方が違う
3ナレッジ・データがバラバラ情報が散在。紙とPDF、クラウドとExcelが混在している
4ナレッジが統合されているマニュアルやFAQが会社としてまとまっている

「レベル1からレベル4までしっかり完璧に整っていれば、AIエージェントを導入すれば間違いなく業務効率化できると思うんです」(井上氏)

建築工事の会社に置き換えると、段階1と段階2は思い当たる方が多いはずです。ある協力会社との段取りはあの担当者しか知らない、同じ工種でも現場代理人ごとにやり方が違う、といった状態です。

重要なのは、この見立てがAIの話ではなく、AI以前の話である点です。ツールの選定よりも前に、自社がどの段階にいるかを把握するところから始まります。

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使われなくなる理由は2つしかない

では、導入したのに使われなくなる会社では何が起きているのか。井上氏の答えは明快でした。

「導入したはいいんだけれども、自分の使い方とちょっと違うなという状況になってしまう。あるいは、今の既存のやり方がそれぞれあって、それを廃止せずに『こっち使ってもいいよ』という感じで導入する。そうすると、要はもういつまでたっても移行しない。このどちらかだと思うんですね」(井上氏)

2つ目は、導入の現場で最も頻繁に起きる形かもしれません。既存のやり方を残したまま新しいツールを併走させると、忙しいときに人は必ず慣れたほうへ戻ります。そして戻ったまま帰ってきません。

「今のやり方を全部やめてください」まで踏み込む

この2つを防ぐために、同社は導入の設計そのものに踏み込みます。

「属人化してしまっているかどうか、業務フローが人によってバラバラになってはいないか、この2つは特に注意した上でデータを統合して、『今のやり方を全部やめてください。これからはこのシステム1本だけにします』という仕組みづくりまで、うちが申し上げてしまう」(井上氏)

そのうえで、井上氏は支援側に必要な条件をこう表現しました。

「簡単に言うと、うちに権限をある程度いただくということですね。そこが大事かなと思います」(井上氏)

ツールを納めるだけの関係では、旧来のやり方を止める判断まではできません。逆に言えば、発注側が「業務のやり方を変える権限」を渡せるかどうかが、定着するかどうかを決めているということになります。

導入を検討する会社にとっては、ベンダー選定と同じくらい、社内の誰がその決定を下すのかを先に決めておくことが重要になります。

人がやる業務と、AIに任せる業務を切り分ける

どの業務をAIに任せるかについても、判断の基準が語られました。

「一番大事なのは、人がやるべき業務とAIがやってもいい業務をしっかり切り分けた上で、人が最終的にチェックは入れる、というところです。ある程度の基準やマニュアルに沿った上で、あまり考えずに動いているもの。それは基本的にAIに落とし込むことができます」(井上氏)

さらに、判断を要する業務についても余地があるといいます。

「ある程度高度なものに関しても、しっかりプロンプトを与えてあげれば、ある程度自律して動いてくれるAIを作れます」(井上氏)

同社が「AIエージェント」を掲げているのは、単発のツールを納品するのではなく、その会社の業務に沿って動く仕組みを作るという意味合いです。研修についても、ChatGPTやGeminiの基礎講座ではなく、その会社の課題をヒアリングしたうえでカスタマイズする形をとっているとのことでした。

導入した日が完成日ではない

システムは納品して終わり、という前提を井上氏は明確に否定します。

「システムというものが、そもそも導入した段階で100パーセントの出来じゃないと思っているんですね。やはり使っていく中で『ここもっとこういう風にできたらいいのに』とか『これできないの』とか、現場で使われている方が我々ほど感じるところがあると思っていて」(井上氏)

ここでSaaSとの違いにも触れられました。既製のサービスはカスタマイズ性がないため、合わない部分が合わないまま残ります。同社は導入後も追加開発や改善開発、現場定着支援を続け、大きな追加開発が必要になった場合はプランを一時的に変更することで費用を抑える形をとっています。

契約は、月額の継続改善型と、一括導入型の2パターンから顧客が選ぶ方式です。

技術的に難しいのはどこか

「難しいものはやっぱり難しいですね」と前置きしたうえで、井上氏が挙げた壁は具体的でした。

  • 膨大なデータや巨大なファイルを扱う場合の処理
  • 外部システムとの連携。特にCADのようなシステムは変数が多く、連携や精度の担保が難しい
  • どのAIモデルが最も適切かの選定に時間がかかる

建築工事の領域でAI活用が図面まわりで足踏みしやすい理由が、開発側の言葉としても裏づけられた形です。

もうひとつ、デモの作り込み具合も難所だといいます。相手に費用対効果が伝わるところまで作り込みたい一方、作り込むほど自社の時間が削られる。最近は認証や権限管理、データベース、ログといった部分は定型化して回し、「そのシステムで何ができるのか」が伝わる部分に優先順位をつけて作っているとのことでした。

1か月でデモが出せる理由

短期間でデモを出せる背景には、開発の作り方があります。

「システムを作るときに、そのシステムの個々のパーツをモジュール化しているんですね。新しいシステムを1個作りますよとなったときに、そのシステムとある程度類似するシステムを、昔作ったシステムの中から引っ張ってきて作るので、開発原価をかなり抑えられる」(井上氏)

人材面では、社員採用ではなく個人事業主への業務委託を中心とする体制をとっています。国公立の理系を中心とした学生に外部委託でデモ版の制作を任せ、そこに中核メンバーがサポートに入る形です。

「デモ版自体が一種、教育になっているんですよね」(井上氏)

教育と開発を同じ工程で回すことで、人材が特定の個人に偏らない体制を作るという考え方です。人材ビジネスで組織づくりの難しさを経験したことが、この設計の背景にあるといいます。

取材を終えて

井上氏の話を通して見えてきたのは、AI導入の成否が着手する前にほとんど決まっているという構図でした。

属人化しているか、業務フローが揃っているか、データが統合されているか。この見立てを飛ばしてツールだけを入れれば、「自分の使い方と違う」と言われて止まります。そして旧来のやり方を廃止しないまま併走させれば、確実に元へ戻ります。

裏返せば、AIを入れる前にやるべきことは驚くほど地味です。誰しか知らない業務を書き出す。担当者ごとにバラバラな手順を揃える。散らばった情報を1か所に集める。この3つは、AIを入れなくても効果があり、入れるならば前提になります。

そして、いざ導入するときには「今のやり方をやめる」という決定を下せる人が社内に必要になります。ツールを選ぶ前に、その人を決めておくことです。

現場側から見た定着の条件については、「ITリテラシーが低い」は言い訳|建築現場33年のAI・DX支援者に聞く、AIが定着する条件で別の専門家に伺っています。研修そのものを立ち消えさせない設計はAI研修を建設会社に定着させる方法にまとめています。

取材協力

株式会社MiToA(ミトア)

AIエージェント時代の人とサービスを育てる

愛知県名古屋市千種区猫洞通5-6

サイト: https://mitoa-ai.com

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