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実行予算書の作り方|工種別内訳の組み立てと利益設定の6ステップ

実行予算書の作り方|工種別内訳の組み立てと利益設定の6ステップ

この記事の前提

実行予算書が何のための書類かは実行予算書とはで解説しました。この記事は、実際に手を動かして予算書を組む手順に絞ります。想定するのは、受注が決まった建築工事(新築・改修を問わず)の予算を初めて任された担当者です。

先に全体像を示します。手順は6つです。

  1. 材料を揃える
  2. 工種に分解する
  3. 数量と単価を当てる
  4. 現場経費を積む
  5. 予備費と利益を決める
  6. 承認を取り、発注基準に落とす

ステップ1: 材料を揃える

予算編成に必要なものは4つです。

  • 契約図面・仕様書一式: 見積時の図面ではなく、契約時点の最新版を使います。見積後に変更が入っていれば、そのぶん予算も変わります
  • 見積時の内訳書と原価資料: 自社が提出した見積の根拠。数量の拾い資料もここに含まれます
  • 請負契約書: 請負金額、工期、支払い条件。支払い条件は資金繰りに効くため、予算編成時に必ず目を通します
  • 過去の類似工事の実行予算と最終原価: 似た用途・規模の工事があれば、単価と経費率の妥当性チェックに使えます

このうち最後の「過去データ」の有無が、予算精度をもっとも左右します。無い場合は、今回の工事が最初の蓄積になると割り切って進めます。

ステップ2: 工種に分解する

請負金額の内訳を、自社が発注する単位で分解します。建築一式の典型的な分解は次のとおりです。

大区分内訳の例
共通仮設仮囲い、仮設事務所、足場、揚重、仮設電気・水道
土工・地業根切り、残土処分、杭、地業
躯体鉄筋、型枠、コンクリート、鉄骨
外装屋根、防水、外壁、金属、シーリング
内装軽鉄・ボード、建具、塗装、内装仕上げ、家具
外構舗装、植栽、囲障
設備調整電気・機械設備の分離発注分の取り合い、総合調整
現場経費現場管理者人件費、光熱費、警備、廃棄物処理

大事なのは、この区分を「協力会社への注文書の単位」と一致させることです。予算の行と注文書が1対1で対応していれば、着工後の予算消化の管理が注文書の集計だけで済みます。積算の分類として美しいかどうかより、発注実務と合っているかを優先してください。

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ステップ3: 数量と単価を当てる

各工種に数量と単価を入れていきます。単価の根拠は、確度の高い順に次の3種類です。

  1. 協力会社の見積: 主要工種(躯体、外装、内装の大口)は、着工前に必ず複数社から見積を取り直します。見積時の概算のまま予算化すると、発注段階で予算が崩れます
  2. 直近の類似工事の発注実績: 見積を取るほどではない工種は、直近の実績単価を使います。ただし資材価格が動いている時期は、実績が古いほど危険です
  3. 市販の単価資料や経験値: 上の2つがない場合の最後の手段。この単価で組んだ行には印を付けておき、発注時に必ず検証します

数量は見積時の拾いを引き継ぎますが、鵜呑みにはしません。少なくとも金額の大きい上位5工種は、図面から数量を拾い直すか、拾い資料の計算をたどって検算します。数量拾いの実務は数量拾い出しの基本【躯体編】で解説しています。

ステップ4: 現場経費を積む

忘れられやすいのが現場経費です。とくに次の項目は、抜けると予算全体が甘くなります。

  • 現場管理者の人件費(工期の全期間分。兼任なら按分)
  • 仮設事務所の設置・撤去とリース料、光熱費、通信費
  • 産業廃棄物の処理費と運搬費
  • 警備員・交通誘導員
  • 重機の回送費、揚重機の待機料
  • 各種検査・試験の費用、写真・書類の作成費

経費は「請負金額の何パーセント」という率で一括計上する方法もありますが、工期が長い工事では期間比例の費目(人件費・リース・警備)が率計算と大きくずれます。期間で発生する費目は「月額×工期」で個別に積むのが安全です。

ステップ5: 予備費と利益を決める

原価を積み上げたら、請負金額との差額を確認します。ここで決めるのは2つです。

予備費は、図面に表れない手戻りや小さな追加に備える枠です。改修工事なら解体してみないと分からないリスクが大きく、新築より厚めに見ます。予備費をゼロにした予算は、最初のトラブルで即座に破綻し、以後誰も予算を見なくなります。

利益は、会社の目標利益率から決めます。積み上げた結果として利益が目標を下回る場合、取る道は3つしかありません。原価を下げる工夫を予算に織り込む(発注方法の変更、VE提案)、利益目標を下げてでも受ける理由を明文化する、あるいはその両方です。「なんとなく現場で頑張る」を対策として認めないことが、予算制度を機能させる分岐点です。

ステップ6: 承認を取り、発注基準に落とす

完成した予算案は、経営者または工事部長の承認を受けます。承認の場で確認すべきは次の3点です。

  • 利益率は社内基準を満たしているか。満たさない場合の理由は明文化されたか
  • 単価の根拠が弱い行(ステップ3で印を付けた行)はどれか
  • 予備費の執行ルール(誰の承認で使えるか)は決まっているか

承認後は、工種ごとの予算額が現場担当者の発注上限になります。発注見積が予算内なら現場判断で進め、超える場合だけ協議する。このルールが決まって初めて、実行予算は「管理の道具」として動き始めます。

着工までの編成スケジュール

受注から着工までの期間は工事によって差がありますが、2週間で組む場合の時間配分の目安を示します。

時期やること目安
1〜2日目材料集め、契約図面と見積図面の差分確認差分は一覧にしておく
3〜5日目工種分解、数量の検算(大口5工種)台帳の骨格ができる
6〜10日目主要工種の協力会社見積の依頼と回収依頼は3日目までに出しておくのがコツ
11〜12日目単価当て、現場経費の積み上げ根拠の弱い行に印を付ける
13日目予備費・利益の決定、予算案の完成目標未達なら対策案も添える
14日目承認会議、発注基準としての共有現場担当者に予算の読み方を説明

最大のボトルネックは協力会社見積の回収です。依頼が遅れると全体が遅れるため、工種分解が終わる前でも、大口工種だけは先行して見積依頼を出してしまうのが実務的な段取りです。着工後に予算が完成する「後追い予算」は、最初の発注が基準なしで走ってしまうため、多少粗くても着工前に完成させることを優先します。

初めての予算編成でありがちな失敗

  • 細かく作りすぎて更新されなくなる: 100行の精緻な予算より、20行でも毎月更新される予算の方が役に立ちます。粒度は発注単位まで、が原則です
  • 消費税の扱いが行ごとに混在する: 税抜で統一するのが原則です。協力会社見積が税込で来たら、転記時に必ず税抜に直します
  • 追加工事を本体予算に混ぜる: 追加・変更は別予算(別行)で管理します。混ぜると、本体の予算超過なのか追加分の未請求なのかが判別できなくなります

まとめ

実行予算書づくりは、突き詰めれば「発注単位に分解し、根拠のある単価を当て、利益を先に決める」という3つの作業です。1本目は2〜3日かかっても構いません。その予算書が、次の工事の見積精度と発注交渉力の土台になります。数量拾いや予算書作成の時間を圧縮したい場合は、実行予算の作成をAIで効率化する手順もあわせてご覧ください。

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