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実行予算の編成率40%から100%へ|予算を組んでから着工する会社に変わった取り組み|H建設株式会社様

実行予算の編成率40%から100%へ|予算を組んでから着工する会社に変わった取り組み|H建設株式会社様

企業概要

項目内容
社名H建設株式会社
所在地関東地方
従業員数28名
主な事業事務所・倉庫・共同住宅の建築一式工事、テナント改修
年間売上約12億円
年間の受注工事約25件

導入前の課題: 予算を「組める工事」と「組めない工事」があった

H建設では、実行予算の編成は工事部長の仕事でした。部長は積算経験が豊富で、部長が予算を組んだ工事は利益のブレも小さい。問題は、部長の時間が足りないことでした。

  • 年間25件の受注に対し、実行予算を組んで着工できたのは10件前後(編成率約40%)
  • 予算のない工事は、見積金額から「たぶんこれくらい」の感覚で発注が進む
  • 決算時に工事別の利益率を並べると、予算のある工事とない工事で明確な差が出ていた
  • 部長が現場対応に追われる繁忙期ほど、予算が組まれないまま着工する工事が増えるという悪循環

経営者が把握していた「なんとなくの症状」を数字にしたところ、予算のない工事の利益率は、ある工事より平均で数ポイント低いことが分かりました。年商12億の会社にとって、これは看過できない差です。この集計が、改善プロジェクトを始める社内合意の決め手になりました。

改善の方針: 部長を増やすのではなく、編成を軽くする

最初に検討されたのは積算担当の採用でしたが、採用市場の状況から早期の確保は困難と判断。方針を「部長にしかできない仕事を減らし、編成の作業自体を軽くする」に切り替えました。取り組みは4つです。

取り組み1: 予算様式を2種類に分ける

それまで全工事で同じ詳細様式を使っていたのをやめ、金額と難易度で「詳細版」と「簡易版(工種15行・A4一枚)」に分けました。改修や小規模工事は簡易版でよい、と決めたことで、「時間がないから予算なし」の言い訳が消えました。

取り組み2: 数量拾いに図面解析型の積算AIを導入

編成時間の大半を占めていた数量拾いに、図面から数量を拾い出すAIツールを導入。過去に部長が人手で拾った完成物件で精度を検証してから、新規物件に適用しました。AIの下書きを部長が検証する分担にしたことで、拾いにかかる時間は物件あたり2〜3日から半日程度になりました。

取り組み3: 「予算がなければ着工しない」を社内ルール化

経営者が「実行予算の承認を着工の条件とする」と宣言し、例外を認めない運用にしました。ルール化の効果は想定以上で、着工日から逆算して予算編成が段取りされるようになり、後追い予算が消えました。

取り組み4: 若手2名を「検証者」として育成

部長の拾いのノウハウを、AIの下書きを検証する作業を通じて若手2名に移転しました。ゼロから拾いを教えるより、「下書きのどこを疑うか」から教える方が習得が速かった、というのが部長の実感です。

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導入前の検証: 完成物件での「模擬テスト」

AI導入にあたり、H建設はいきなり新規物件で使わず、直近に竣工した倉庫と事務所の2物件で模擬テストを行いました。過去に部長が人手で拾った数量と、同じ図面をAIに読ませた数量を、工種別に突き合わせる方法です。

結果には濃淡がありました。躯体(コンクリート・型枠・鉄筋)と外壁・屋根の面もの、内装の仕上げ面積は、実用に足る精度で一致。一方、雑工事や外構の一部、特殊な納まり部分は下書きの信頼度が低く、人の拾いが必要と判明しました。

この検証で得たものは精度の数字だけではありません。「どの工種は任せてよく、どの工種は人が拾うか」という社内の運用線引きが、感覚ではなくデータで決まったこと。そして、懐疑的だったベテラン社員に対して、実際の差異表を示して説明できたことです。導入の合意形成は、この模擬テストの資料一枚でほぼ終わったといいます。

編成率100%が変えた経営会議

予算が全工事に揃ったことで、月次の経営会議の風景が変わりました。以前は「今月の売上と入金」の確認が中心だったのが、工事別の着地見込み一覧を見ながら「どの工事が予算から動いたか」を話す会議になったのです。

とくに効果が大きかったのは、受注判断へのフィードバックです。完成工事の予算差異データが蓄積された結果、「この用途・この規模の工事は利益が残りにくい」という傾向が数字で見えるようになり、見積段階の利益設定と、受注の選別(相見積への参加判断)に反映されるようになりました。実行予算の整備は現場管理の話に見えて、実際には受注戦略の土台だった、というのが経営者の振り返りです。

定量効果(導入1年後)

指標導入前導入1年後
実行予算の編成率約40%100%
予算編成の所要時間(1件平均)2〜3日半日〜1日
編成に関われる人数1名3名
工事別利益率の把握時期決算時月次

編成率100%の副産物として、月次の原価管理が全工事で機能し始めました。予算というものさしが全工事に揃ったことで、着地見込みの精度も向上しています。

担当者の声

工事部長のコメントです。「正直、AIの拾いは最初は信用していませんでした。検証で数字を突き合わせてみて、使える工種と注意が要る工種が分かってからは、拾いを任せて査定と交渉に時間を使えるようになった。一番変わったのは、若手に『検証』という形で積算を教えられるようになったことです」

苦労した点

  • 簡易版様式の設計で「どこまで省いてよいか」の線引きに議論があった(最終的に、工種の粒度は落としても予備費と利益の行は必ず残すことで決着)
  • AI導入の初月は、図面データの受領形式が整わず読み取り精度が安定しなかった。設計事務所への依頼方法を統一してから改善した

今後の課題と展望

H建設が次に取り組もうとしているのは3つです。第一に、改修工事への展開。解体してみないと分からない不確実性が大きい改修では、予備費の設定方法を新築とは別に設計する必要があり、現在ルールを検討中です。第二に、蓄積された予算・原価データの見積への本格活用。工種別の実績単価を見積システム側から参照できる形に整備し、見積と予算の往復をさらに速くする構想です。第三に、検証者に育った若手2名を、次は査定・交渉の担い手に引き上げること。「拾える人」から「決められる人」への育成が、部長の最後の仕事だと位置づけられています。

これから取り組む会社への3つのアドバイス

H建設の経営者と工事部長に、同じ課題を持つ会社へのアドバイスを聞きました。

  1. 編成率を測ることから始める: 「うちは予算を組んでいる」という会社でも、全受注に対する編成率を数えると5割を切っていることが珍しくありません。現状の数字を出すだけで、課題の大きさが共有できます
  2. 様式を軽くする決断を先にする: ツール導入より先に、簡易版様式を許容する意思決定が効きました。完璧な予算を10件組むより、粗くても25件組む方が、会社全体の利益は守れます
  3. AIは「部長の代わり」ではなく「部長の時間を作る道具」: 拾いをAIに任せても、単価と利益の判断は結局ベテランの仕事です。判断できる人が残っているうちに、判断以外の作業を引き剥がすこと。それが技能承継の実質だと感じています

まとめ

H建設の事例のポイントは、人を増やさず「編成を軽くする・検証に切り替える・ルールで担保する」の3点で編成率100%を実現したことです。実行予算の組み方の基本は実行予算書の作り方で、AIを組み込む手順は実行予算の作成をAIで効率化する手順で解説しています。

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