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開口部・スラブ端部の墜落防止|建築躯体工事の養生計画の立て方

開口部・スラブ端部の墜落防止|建築躯体工事の養生計画の立て方

墜落は建設業の労働災害の最大要因

建設業の死亡災害で最も大きな割合を占め続けているのが墜落・転落です。そして建築躯体工事の墜落リスクは、足場のような「いかにも危険な場所」だけでなく、建物そのものに次々と生まれる開口部とスラブ端部に潜んでいます。

足場には組立時から計画と点検の仕組みがあります。一方、躯体の開口部は工事の進行とともに毎日生まれ、形を変え、時には職種の都合で養生が外されます。つまり開口部の墜落防止は、一度作って終わりの設備ではなく、生まれ続ける危険を管理し続ける仕事です。この記事では、その管理のやり方を解説します。

なお、墜落防止措置は労働安全衛生法令(労働安全衛生規則)に囲い・手すり・覆い等の設置義務や高さの基準が定められています。具体的な数値基準と適用条件は改正されることがあるため、最新の条文と所轄の指導を必ず確認してください。この記事は法令解説ではなく、現場の管理実務に焦点を当てます。

建築躯体の危険箇所マップ

まず、墜落リスクが生まれる場所を種類で押さえます。建築の躯体工事では、おおむね次の6種類です。

  1. エレベーターシャフト: 全階を貫通する大開口。養生の外れが即、最下階までの墜落につながる最重要箇所です
  2. 階段室・吹き抜け: 階段が後施工の場合、階段室は各階で開口として残ります
  3. スラブ端部(外周): 外部足場との隙間、足場がまだ上がっていない階の外周
  4. 設備開口・ダクト開口: パイプスペース、ダクトスペース、設備配管用の床開口。数が多く、小さいために軽視されがちです
  5. バルコニー・庇の先端: 手すり壁が立ち上がるまでの期間が無防備になります
  6. たて穴まわりの作業床: 型枠解体後の梁上や、デッキ敷き込み前の鉄骨梁上

管理の第一歩は、着工前に構造図・意匠図からこれらを拾い出し、階ごとの「開口一覧」を作ることです。図面上で拾えない開口はありません。現場で見つけてから対応する方式は、必ず漏れます。

養生の基本原則: 「開けた者が塞ぐ」

開口部養生の運用原則はシンプルです。

  • 開口が生まれた時点で養生する: スラブのコンクリートを打って型枠を解体したら、その日のうちに開口を塞ぐ。翌日に回した養生は、翌朝の別職種の作業に先を越されます
  • 開けた者が塞ぐ、外した者が戻す: 設備業者が配管のために覆いを外したら、その業者がその場で戻す。この責任ルールを職長会で合意し、朝礼で繰り返します
  • 覆いは「ずれない・分かる・踏み抜けない」: 覆いには固定(ずれ防止)と、開口注意の表示を行い、上に乗っても壊れない強度のものを使います。ベニヤ1枚を置いただけの「ふた」は、養生ではなく罠になります
  • 外周・大開口は手すりで囲う: 人が落ちる寸法の開口や端部は、覆いではなく手すり・囲いが原則です。単管による手すりは、必要な段数と高さを法令基準に沿って確保します
  • 強風・台風の後は総点検する: 悪天候はシートや覆いをまとめて動かします。台風・強風の翌朝は、通常の巡回とは別に養生の総点検を行ってから作業を開始します
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箇所別の実務ポイント

エレベーターシャフト

各階の出入口を全高にわたって塞ぎ、内部への立ち入りを物理的に防ぎます。シャフト内での作業(型枠・清掃・EV据付前作業)が発生する期間は、作業計画と安全帯の使用条件をその都度決め、作業後の復旧確認を管理者が行います。「EV業者が入るから」と養生を外したまま週末を迎える、が典型的な事故パターンです。

設備開口

小さい開口ほど数が多く、管理から漏れます。有効なのは、開口一覧に番号を振り、覆いにも同じ番号を書いておく方法です。番号があると「どこの覆いが外れているか」を巡回で特定でき、復旧の指示が具体的になります。

スラブ端部・バルコニー

外部足場が追いついていない期間、上階の端部は無防備です。躯体工程と足場工程のズレを工程表上で確認し、ズレる期間には先行手すりや親綱などの代替措置を計画します。ここは職長任せにせず、工程を知る施工管理者が先回りすべき箇所です。

養生が外れたままになる3つの瞬間

事故の多くは、養生が「なかった」のではなく「外されて戻らなかった」ときに起きます。外れたままになる典型は次の3つです。

  1. 後続職種の作業直後: 設備・電気の作業で覆いを外し、作業後の復旧が翌日回しになる。対策は「外した者が戻す」ルールの徹底と、当日夕方の巡回での復旧確認です
  2. 揚重・搬入の直後: 開口を資材の搬入経路に使い、搬入が終わっても開いたまま。対策は、搬入計画に「復旧担当者」を明記することです
  3. 工程の切り替わり: 躯体から仕上げへ、職種が入れ替わるタイミングで管理責任が宙に浮く。対策は、職長会での引き継ぎ確認と、開口一覧の更新です

3つに共通するのは「作業そのもの」ではなく「作業の後始末」で穴が開くことです。巡回のタイミングを夕方に置く意味もここにあります。

養生計画と台帳で管理する

まとめとして、開口部管理を仕組みにする手順を示します。

  1. 着工前に図面から開口・端部を拾い、階別の開口一覧(台帳)を作る
  2. 開口ごとに養生方法(覆い・手すり・立入禁止措置)と設置時期を決め、仮設計画に織り込む
  3. 覆いに番号と表示を付け、台帳と対応させる
  4. 日々の巡回で外れ・ずれを確認し、台帳に記録する。外した職種への復旧指示も記録に残す
  5. 工程の進行(足場解体・手すり壁完成・EV据付)に合わせて、養生の解除を台帳上で消し込む

ここまでやると、監督署の臨検や発注者のパトロールでも、管理の実態を台帳と現場の対応で示せます。安全管理は「やっている」ことより「やっていると示せる」ことが、対外的には同じくらい重要です。

養生のコストは予算に最初から入れる

開口部養生が現場任せになるもうひとつの原因は、費用の出どころが決まっていないことです。養生材(覆い材、単管、クランプ、表示類)と、設置・盛り替えの手間は、決して無視できない金額になります。予算に計上されていなければ、現場は「あるもので済ませる」方向に流れ、それが薄いベニヤ1枚の覆いを生みます。

対策はシンプルで、着工前に作った開口一覧から養生材の数量を拾い、実行予算の共通仮設費に1行立てておくことです。数量の根拠が台帳にあるので、拾いは難しくありません。また、EVシャフトの全高養生など大物は、製作するか既製品・リース品を使うかで費用と工期が変わるため、仮設計画の段階で比較しておきます。安全対策は「気持ち」ではなく数量と金額で計画に載せる。これが、養生が最後まで維持される現場と、途中で息切れする現場の違いです。

まとめ

開口部・端部の墜落防止は、設備の問題ではなく運用の問題です。図面から拾って台帳を作る、開けた者が塞ぐルールを合意する、夕方の巡回で復旧を確認する。この3点を回せば、躯体工事の墜落リスクは大きく下げられます。安全巡回全体の着眼点については建築現場の安全パトロール着眼点で解説しています。

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