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実行予算書とは|見積書との違いと、利益を守るために作る理由

実行予算書とは|見積書との違いと、利益を守るために作る理由

実行予算書とは

実行予算書とは、受注した工事を「いくらで完成させるか」を工事の着手前に決める社内の計画書です。発注者に提出する見積書が「いくらで売るか」の書類であるのに対し、実行予算書は「いくらで作るか」を決めます。売値と原価の差が利益ですから、実行予算書は受注した瞬間の見込み利益を確定させる書類だと言えます。

建築一式工事では、工事金額の7〜8割を協力会社への外注費と材料費が占めるのが一般的です。つまり利益の大半は、着工前の発注戦略と予算の組み方で決まります。現場での節約努力で取り返せる幅は、実はそれほど大きくありません。だからこそ、着工前に実行予算を組むかどうかが利益に直結します。

見積書・実行予算書・原価管理の関係

3つの言葉はよく混同されますが、役割と時期が違います。

書類・業務目的作る時期見る相手
見積書受注するための売値の提示受注前発注者
実行予算書完成までにかける原価と利益の計画受注直後・着工前社内(経営者・現場)
原価管理計画と実際の発生原価の突き合わせ着工後、毎月社内(経営者・現場)

見積書は競争のなかで作るため、戦略的な値引きや端数調整が入ります。その金額をそのまま「予算」として現場に渡すと、値引き分のしわ寄せがどこに行ったのか誰にも分からなくなります。受注金額から利益を先に確保し、残りを工種ごとに配分し直す作業が実行予算の編成です。

そして着工後は、毎月の発生原価を実行予算と見比べます。実行予算書は作って終わりの書類ではなく、原価管理の「ものさし」として工事が終わるまで使い続けるものです。

なぜ作るのか。3つの目的

1. 利益を「結果」ではなく「目標」にする

実行予算がない会社では、利益は完成後に判明する結果です。実行予算を組むと、利益は着工前に決めた目標になります。目標があるから、途中で予算をはみ出しそうな工種に気づけますし、対策も打てます。

2. 発注の判断基準を現場に渡す

協力会社に見積を取ると、当然ながら金額に幅があります。実行予算という基準があれば、現場担当者は「予算内か、超えるか」で判断でき、超える場合だけ上司と対策を協議すればよくなります。基準がなければ、発注のたびに「これでいいですか」という曖昧な稟議が繰り返されます。

3. 完成後の振り返りを可能にする

赤字工事が出たとき、実行予算があれば「どの工種が、いくら、なぜ超えたのか」を特定できます。拾い漏れだったのか、単価の読み違いか、手戻りによる増額か。原因が分かれば次の見積に反映できます。予算がなければ、赤字の理由は「なんとなく厳しい工事だった」で終わり、同じ失敗が繰り返されます。

実行予算がない会社で起きること

実行予算を組まずに工事を回している会社から、実際によく聞く症状を挙げます。

  • 決算で税理士から数字を聞くまで、どの工事で儲かったのか分からない
  • 現場担当者ごとに利益率がばらつくが、腕の差なのか運なのか判断できない
  • 協力会社への発注額の妥当性を誰も検証しておらず、付き合いの長い会社に言い値で出している
  • 追加工事の原価が本体と混ざり、請求漏れに気づけない
  • 完成間際になって「思ったより外注費がかさんでいる」ことが発覚するが、打つ手がない

どれも担当者の能力の問題ではなく、ものさしが存在しないことの帰結です。

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実行予算書に入れる項目

書式は会社ごとに自由ですが、建築一式工事なら最低限、次の構成が必要です。

  1. 工事概要: 工事名、発注者、工期、請負金額(税抜で統一)
  2. 工種別の原価内訳: 仮設、土工・地業、躯体(鉄筋・型枠・コンクリート・鉄骨)、外装、内装、建具、設備関係の調整費など、自社の発注単位に合わせた区分
  3. 費目の区分: 各工種を材料費・外注費・労務費・経費に分ける
  4. 現場経費: 現場管理者の人件費、仮設事務所、光熱費、警備、重機回送など
  5. 予備費: 想定外への備え。請負金額の数パーセントを最初から見込む
  6. 利益: 請負金額から上記をすべて引いた残り。目標利益として明記する

ポイントは、区分を「協力会社への発注単位」に合わせることです。積算上の分類がどれだけ細かくても、発注と支払いの単位で集計できなければ、あとで実際の原価と突き合わせられません。

運用の流れ

実行予算は次のサイクルで運用します。

  1. 編成: 受注が決まったら、見積の原価資料をベースに担当者が予算案を作る
  2. 承認: 経営者または工事部長が内容を確認して承認する。利益率が社内基準を下回る場合は、その理由と対策をここで議論する
  3. 発注管理: 協力会社への発注のつど、予算残高と見比べる
  4. 月次対比: 毎月、発生原価と出来高を予算と突き合わせ、完成時の着地見込みを更新する
  5. 完成時の総括: 最終原価と予算の差異を工種別に振り返り、次の見積単価に反映する

このうち省略されがちなのが2の承認と5の総括です。承認がないと予算が「担当者の私的メモ」になり、総括がないと会社に積算のノウハウが蓄積しません。

経営者は予算書のどこを見ればよいか

実行予算制度は、承認する側の目線が甘いと形骸化します。担当者が持ってきた予算案に対して、経営者・工事部長が最低限確認したいのは次の3点です。

  • 利益率だけでなく利益額を見る: 率が基準を満たしていても、工期が長い工事は現場管理者を長期間拘束します。利益額を工期の月数で割った「月あたり利益」で見ると、会社の限られた管理者をどの工事に張り付けるべきかの判断ができます
  • 大口3工種の単価根拠を聞く: 予算の大半は上位数工種で決まります。躯体・外装・内装あたりの大口について「この単価は誰の見積か、いつの実績か」を口頭で確認するだけで、根拠の弱い予算はその場で分かります
  • 予備費の位置を確認する: 予備費が利益に紛れていないか、各工種に薄く隠されていないかを見ます。予備費は独立した1行にし、使ったら減る形にしておかないと、超過の早期発見ができません

月次の対比では、細かい行の増減より「完成時の着地見込みが先月から動いたか」を追うのが効率的です。着地見込みが動いたら、その理由だけを担当者に聞けば十分です。

よくある質問

Q. 小さな改修工事でも作るべきですか?

金額が小さくても、外注が2社以上入る工事なら簡易版を作る価値があります。A4一枚で、工種5行程度の予算でも「ものさしがある」効果は同じです。

Q. 見積時の原価資料と何が違うのですか?

見積時の原価は「受注するための概算」で、値引き前の理想値であることが多いはずです。実行予算は受注金額という現実から出発し、実際に発注する単価で組み直します。両者の差額を見ること自体が、自社の見積精度の検証になります。

Q. 作る時間が取れません。

最初の1本は時間がかかりますが、2本目からは前の工事の予算書が下敷きになります。また、図面からの数量拾いと予算書の下書きをAIやツールで時短する方法もあります。詳しくは実行予算の作成をAIで効率化する手順で解説しています。

まとめ

実行予算書は、受注のたびに利益を「祈る」のではなく「決める」ための道具です。まずは次の受注案件で、工種10行程度の簡単な予算書を1本作ることから始めてください。具体的な作り方の手順は実行予算書の作り方で詳しく解説します。

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