総合図・プロット図とは|建築工事の違いと作成手順・会議の進め方
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編集・発行:KMC株式会社
総合図とは、意匠・構造・設備の情報を1枚に重ね合わせ、天井内や壁・床の干渉を見つけて解消する調整用の図面です。プロット図とは、天井・壁・床に付く照明・感知器・吹出口・点検口・スイッチ・コンセントなどの器具の位置を決める図面です。 総合図は「見えないところの納まり」を、プロット図は「見えるところの位置と見た目」を決めるもので、どちらも建築の元請が音頭を取って各職種と合意します。
どちらも法令で定義された用語ではなく実務用語ですが、国土交通省の「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)」(以下「標仕」)は、施工図等の作成に当たり関連工事等との納まりを工事関係者と調整のうえ十分検討することを求めています(1.2.3(2))。総合図とプロット図は、その調整を形にする道具です。
「図面どおりに作ったのにぶつかる」のはなぜか
建築の設計図は、意匠図・構造図・電気設備図・機械設備図がそれぞれの専門で描かれています。各図面は単体では正しくても、重ね合わせると衝突します。ダクトと梁が同じ高さを通る、照明とスプリンクラーが同じ位置にいる、点検口の下に間仕切りがある。設計段階の調整には限界があり、施工の詳細まで落とした整合は現場側の仕事として残ります。
この記事では、1枚の総合図ができるまでの流れを追いながら、元請施工管理者の調整実務を解説します。
総合図とプロット図の違いをまず整理する
似た言葉ですが、役割が違います。違いは下の表のとおりです。乱暴に言えば、総合図は「見えないところの喧嘩の仲裁」、プロット図は「見えるところの見栄えと機能の決定」。どちらも、決定の主体は一職種ではなく現場全体であり、だからこそ元請が音頭を取る図面です。
| 観点 | 総合図 | プロット図 |
|---|---|---|
| 目的 | 干渉の発見と解消 | 器具位置の決定と意匠との整合 |
| 主な範囲 | 天井内(梁・ダクト・配管・ケーブルラック)、壁・床の貫通、機器の搬入経路 | 天井面・壁面・床面の器具(照明、感知器、スプリンクラー、吹出口、点検口、スイッチ、コンセント等) |
| 主な図の形 | 平面図に天井内の断面検討図を添える | 天井伏図・展開図に器具を記入する |
| 反映先 | スリーブ図、インサート図、ダクト・配管の製作図 | 天井割付図、器具の発注、墨出し |
| 決まらないと起きること | 天井高さ不足、梁貫通の追加、点検できない機器 | 器具の打ち替え、天井材の張り直し、見た目の不揃い |
1枚ができるまでの流れを追う
第1段階: ベースを描き、各社の情報を重ねる
出発点は意匠・構造の施工図ベースに、電気・機械の各設備業者が自社の配管・ダクト・ラック・器具を記入することです。ここで元請が決めておくべきは、書式のルールです。レイヤーや色の分担(電気は何色、衛生は何色)、記入の締切、図面の版管理。ルールなしで始めると、重ね合わせた瞬間に「どれが最新か分からない」問題が起きます。
第2段階: 干渉をリストにする
重ねた図面から、干渉と怪しい箇所を洗い出して一覧にします。干渉チェックの定番ポイントは次のとおりです。
- 天井内: 梁下とダクトの上下関係、ダクト・配管・ラックの交差部、勾配が必要な排水管のルート
- 天井面: 器具同士の距離、点検口と器具・下地の位置関係、天井目地と器具の割付け
- 壁・床: スリーブ位置と構造の欠き込み制限、床下配管と基礎梁、盤・機器の搬入経路と扉幅
- 維持管理: バルブ・ダンパー・フィルターに手が届くか、点検口はその真下にあるか
最後の維持管理の視点は忘れられがちですが、引渡し後に最も恨まれるのがここです。「機器はあるが点検できない」建物は、総合図の敗北と言えます。
第3段階: 総合図会議で決める
洗い出した論点を、関係職種を集めた総合図会議で1件ずつ決めていきます。会議運営の要点は3つです。
- 優先順位の原則を先に共有する: 一般的には、重力に逆らえない勾配配管が最優先、次に大きなダクト、電気配線・ラックは可撓性が高いので後、という順で調整します。原則が共有されていれば、個別の議論は速くなります
- 決められない論点を仕分ける: 設計変更や意匠判断が必要なもの(天井高さを下げる、梁貫通の可否)は、現場では決められません。設計者・構造設計者への質疑として切り出し、回答期限を管理します。標仕でも、納まり・取合いの関係で設計図書によることが困難な場合は監督職員と協議するとしています(1.1.8)
- 決定を記録する: 決定事項は図面への反映とセットで議事録に残します。「言った言わない」は総合図の世界でも定番の紛争です。標仕も協議結果の記録の整備を求めています(1.2.4(2))
公共建築工事で設備工事が別契約(関連工事)になっている場合、標仕は関連工事等について監督職員が行う調整に協力し、工事全体の円滑な施工に努めるとしています(1.1.7)。別契約の設備業者が会議に出てこないときは、監督職員を通じて調整の場を設けてもらいます。
第4段階: 決定を展開し、現場を図面に合わせる
承認された総合図・プロット図は、各職種の施工図・加工図に反映されて初めて意味を持ちます。標仕では施工図等は施工に先立ち監督職員の承諾を受け、変更時も報告して承諾を受けるとしている(1.2.3(1)(3))ため、総合図の決定で直した施工図も承諾の手続きに乗せます。スリーブ図、インサート図、ダクト・配管の製作図が総合図と整合しているかの確認までが元請の仕事です。そして現場では、墨出しと先行取り付けの順序をこの図面に従わせます。「図面はあるが現場は先行者勝ち」になっている現場は、総合図を描いた意味がありません。
スケジュール: 逆算の起点は「発注と製作」
総合図はいつまでに固めるべきか。答えは、関連する製作・発注のリードタイムから逆算です。ダクトや配管の製作、ユニット化された部材、天井下地の割付け。これらの発注期限より前に、該当エリアの総合図が確定している必要があります。実務では、躯体工事中に天井内の調整を進め、仕上げ工程が始まる前にエリアごとに順次確定させていく形になります。全館一括で完璧を目指すより、工程が先行するエリアから確定させる方が現実的です。
BIMがあれば総合図は要らないのか
干渉チェックといえばBIMを連想する時代になりました。3次元モデルで機械的に干渉を検出できるなら、総合図の作業は不要になるのでしょうか。
現時点の実務的な答えは「検出は速くなるが、決定はなくならない」です。BIMが得意なのは、モデル化された部材同士のぶつかりを漏れなく見つけること。一方、見つかった干渉のどちらを動かすか、意匠・コスト・維持管理をどう天秤にかけるかは、依然として人が集まって決める仕事です。つまりBIMは総合図会議の議題リストを自動生成してくれる道具であり、会議そのものの代わりではありません。
中小の建築会社にとっての現実解は、全物件のフルBIM化ではなく、天井内が混み合う部分だけ3次元で検討する、設備業者のCADデータを重ね合わせに活用する、といった部分活用です。道具が2次元でも3次元でも、この記事で述べた「原則の共有・会議の運営・決定の記録」という調整の骨格は変わりません。
規模が小さい物件では、どこまで省略してよいか
総合図と聞くと大規模物件の話に思えますが、小さな建物にも天井内はあります。省略の目安は「天井内の混雑度」と「後から直せるか」です。
- 事務所ワンフロアの内装改修程度なら、フル総合図は不要。ただし器具プロット図だけは作り、意匠との整合を確認する価値があります
- 天井内にダクト・配管・ラックが交差する建物(飲食・クリニック・工場)は、規模が小さくても該当エリアの断面検討を行うべきです
- 判断に迷ったら「点検口から手が届くか」を自問してください。維持管理に不安が残る納まりは、規模と無関係に検討が必要です
省略とは検討しないことではなく、検討の範囲を意図して絞ることです。
ありがちな失敗
- 設備業者に丸投げする: 設備間の調整はできても、意匠・構造との判断や職種間の利害調整は元請にしかできません。丸投げされた総合図は「描いただけの図面」になります
- 会議に決定権者が来ない: 各社の担当者が持ち帰ってばかりの会議は、回数だけ増えます。決められる人の出席を求めるのは元請の交渉力です
- 変更の反映が止まる: 工事後半の設計変更が総合図に反映されず、図面と現場が乖離していく。変更管理のルート(変更情報は必ず総合図担当を経由する)を決めておきます
【チェックリスト】総合図・プロット図を確定させる前に
| 段階 | 確認すること |
|---|---|
| 着手時 | 書式ルール(色分担・締切・版管理)を配り、エリアごとの確定期限を発注から逆算して工程表に入れたか |
| 重ね合わせ | 天井内・天井面・壁床・維持管理の4視点(第2段階)で干渉リストを作ったか |
| 会議 | 決定権者が出席し、決められない論点を質疑として切り出したか |
| 展開 | 決定を議事録と図面に反映し、スリーブ図・製作図との一致と変更した施工図の承諾を確認したか |
| 変更時 | 設計変更の情報が必ず総合図の担当を経由するか |
よくある質問
Q. 総合図は誰が作りますか。 A. 実務では建築の元請が取りまとめ、設備業者が自社の配管・ダクト・器具を記入する形が一般的です。
Q. 総合図とプロット図はどちらを先に作りますか。 A. 天井内の納まり(総合図)を進めながら、天井伏図にプロット図を重ねていく流れが現実的です。
Q. 公共建築工事の仕様書に総合図の決まりはありますか。 A. 標仕に「総合図」の定義はなく、施工図等の調整と承諾の規定(1.2.3)があるだけです。要否や提出の扱いは特記仕様書や監督職員の指示で確認してください。
まとめ
総合図・プロット図は、各職種の情報を重ね、干渉と位置を現場全体で決め、その決定を各社の施工図へ展開するための道具です。中心にいるべきは元請であり、原則の共有・会議の運営・決定の記録という調整の技術が問われます。設備との日々の取り合いは設備工事との取り合い調整、施工図全般の照合は躯体図のチェックポイントもあわせてご覧ください。
出典・参考
- 国土交通省大臣官房官庁営繕部「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」1章(1.1.7 関連工事等の調整、1.1.8 疑義に対する協議等、1.2.3 施工図等、1.2.4 工事の記録等): https://www.mlit.go.jp/gobuild/kenchiku_hyoushi.html
- 国土交通省大臣官房官庁営繕部「公共建築工事標準仕様書(電気設備工事編)令和7年版」1章(1.1.7 関連工事等の調整、1.2.3 施工図等)。官庁営繕の技術基準の一覧: https://www.mlit.go.jp/gobuild/gobuild_tk2_000017.html
- 総合図・プロット図の作成手順、干渉チェックの着眼点、会議の運営は、法令・公的基準に定めのない現場の実務慣行をもとにまとめています。
※ 2026年10月1日:冒頭で総合図とプロット図の意味を言い切る構成に見直し、両者の違いの比較表、公共建築工事標準仕様書の施工図等・関連工事の調整・協議の記録の扱い、確定前のチェックリスト、よくある質問、出典を追加しました。
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