総合図・プロット図とは|設備との取り合いを施工前に潰す1枚ができるまで
「図面どおりに作ったのにぶつかる」のはなぜか
建築の設計図は、意匠図・構造図・電気設備図・機械設備図がそれぞれの専門で描かれています。各図面は単体では正しくても、重ね合わせると衝突します。ダクトと梁が同じ高さを通る、照明とスプリンクラーが同じ位置にいる、点検口の下に間仕切りがある。設計段階の調整には限界があり、施工の詳細まで落とした整合は現場側の仕事として残ります。
この「重ね合わせて整合させる」ための道具が総合図とプロット図です。この記事では、1枚の総合図ができるまでの流れを追いながら、元請施工管理者の調整実務を解説します。
総合図とプロット図の違いをまず整理する
似た言葉ですが、役割が違います。
- 総合図: 意匠・構造・設備の情報を1枚に重ね合わせた調整用の図面。平面が基本で、天井内の断面検討図を伴うことが多い。目的は「干渉の発見と解消」です
- プロット図: 天井・壁・床に付く器具(照明・感知器・スプリンクラー・スピーカー・点検口・スイッチ・コンセントなど)の位置を確定させる図面。目的は「位置の決定と意匠との整合」です
乱暴に言えば、総合図は「見えないところの喧嘩の仲裁」、プロット図は「見えるところの見栄えと機能の決定」。どちらも、決定の主体は一職種ではなく現場全体であり、だからこそ元請が音頭を取る図面です。
1枚ができるまでの流れを追う
第1段階: ベースを描き、各社の情報を重ねる
出発点は意匠・構造の施工図ベースに、電気・機械の各設備業者が自社の配管・ダクト・ラック・器具を記入することです。ここで元請が決めておくべきは、書式のルールです。レイヤーや色の分担(電気は何色、衛生は何色)、記入の締切、図面の版管理。ルールなしで始めると、重ね合わせた瞬間に「どれが最新か分からない」問題が起きます。
第2段階: 干渉をリストにする
重ねた図面から、干渉と怪しい箇所を洗い出して一覧にします。干渉チェックの定番ポイントは次のとおりです。
- 天井内: 梁下とダクトの上下関係、ダクト・配管・ラックの交差部、勾配が必要な排水管のルート
- 天井面: 器具同士の距離、点検口と器具・下地の位置関係、天井目地と器具の割付け
- 壁・床: スリーブ位置と構造の欠き込み制限、床下配管と基礎梁、盤・機器の搬入経路と扉幅
- 維持管理: バルブ・ダンパー・フィルターに手が届くか、点検口はその真下にあるか
最後の維持管理の視点は忘れられがちですが、引渡し後に最も恨まれるのがここです。「機器はあるが点検できない」建物は、総合図の敗北と言えます。
第3段階: 総合図会議で決める
洗い出した論点を、関係職種を集めた総合図会議で1件ずつ決めていきます。会議運営の要点は3つです。
- 優先順位の原則を先に共有する: 一般的には、重力に逆らえない勾配配管が最優先、次に大きなダクト、電気配線・ラックは可撓性が高いので後、という順で調整します。原則が共有されていれば、個別の議論は速くなります
- 決められない論点を仕分ける: 設計変更や意匠判断が必要なもの(天井高さを下げる、梁貫通の可否)は、現場では決められません。設計者・構造設計者への質疑として切り出し、回答期限を管理します
- 決定を記録する: 決定事項は図面への反映とセットで議事録に残します。「言った言わない」は総合図の世界でも定番の紛争です
第4段階: 決定を展開し、現場を図面に合わせる
承認された総合図・プロット図は、各職種の施工図・加工図に反映されて初めて意味を持ちます。スリーブ図、インサート図、ダクト・配管の製作図が総合図と整合しているかの確認までが元請の仕事です。そして現場では、墨出しと先行取り付けの順序をこの図面に従わせます。「図面はあるが現場は先行者勝ち」になっている現場は、総合図を描いた意味がありません。
スケジュール: 逆算の起点は「発注と製作」
総合図はいつまでに固めるべきか。答えは、関連する製作・発注のリードタイムから逆算です。ダクトや配管の製作、ユニット化された部材、天井下地の割付け。これらの発注期限より前に、該当エリアの総合図が確定している必要があります。実務では、躯体工事中に天井内の調整を進め、仕上げ工程が始まる前にエリアごとに順次確定させていく形になります。全館一括で完璧を目指すより、工程が先行するエリアから確定させる方が現実的です。
BIMがあれば総合図は要らないのか
干渉チェックといえばBIMを連想する時代になりました。3次元モデルで機械的に干渉を検出できるなら、総合図の作業は不要になるのでしょうか。
現時点の実務的な答えは「検出は速くなるが、決定はなくならない」です。BIMが得意なのは、モデル化された部材同士のぶつかりを漏れなく見つけること。一方、見つかった干渉のどちらを動かすか、意匠・コスト・維持管理をどう天秤にかけるかは、依然として人が集まって決める仕事です。つまりBIMは総合図会議の議題リストを自動生成してくれる道具であり、会議そのものの代わりではありません。
中小の建築会社にとっての現実解は、全物件のフルBIM化ではなく、天井内が混み合う部分だけ3次元で検討する、設備業者のCADデータを重ね合わせに活用する、といった部分活用です。道具が2次元でも3次元でも、この記事で述べた「原則の共有・会議の運営・決定の記録」という調整の骨格は変わりません。
規模が小さい物件では、どこまで省略してよいか
総合図と聞くと大規模物件の話に思えますが、小さな建物にも天井内はあります。省略の目安は「天井内の混雑度」と「後から直せるか」です。
- 事務所ワンフロアの内装改修程度なら、フル総合図は不要。ただし器具プロット図だけは作り、意匠との整合を確認する価値があります
- 天井内にダクト・配管・ラックが交差する建物(飲食・クリニック・工場)は、規模が小さくても該当エリアの断面検討を行うべきです
- 判断に迷ったら「点検口から手が届くか」を自問してください。維持管理に不安が残る納まりは、規模と無関係に検討が必要です
省略とは検討しないことではなく、検討の範囲を意図して絞ることです。
ありがちな失敗
- 設備業者に丸投げする: 設備間の調整はできても、意匠・構造との判断や職種間の利害調整は元請にしかできません。丸投げされた総合図は「描いただけの図面」になります
- 会議に決定権者が来ない: 各社の担当者が持ち帰ってばかりの会議は、回数だけ増えます。決められる人の出席を求めるのは元請の交渉力です
- 変更の反映が止まる: 工事後半の設計変更が総合図に反映されず、図面と現場が乖離していく。変更管理のルート(変更情報は必ず総合図担当を経由する)を決めておきます
まとめ
総合図・プロット図は、各職種の情報を重ね、干渉と位置を現場全体で決め、その決定を各社の施工図へ展開するための道具です。中心にいるべきは元請であり、原則の共有・会議の運営・決定の記録という調整の技術が問われます。施工図全般の照合は躯体図のチェックポイントもあわせてご覧ください。
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