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協力会社を「評価と対話」で束ね直し、職人不足でも現場が止まらなくなった|N建設工業株式会社様

協力会社を「評価と対話」で束ね直し、職人不足でも現場が止まらなくなった|N建設工業株式会社様

企業概要

項目内容
社名N建設工業株式会社
所在地北陸地方
従業員数27名
主な事業共同住宅・福祉施設・店舗の建築一式工事
年間売上約13億円
取引協力会社約60社

導入前: 「頼める会社」が年々減っていく

N建設工業の危機感は、受注ではなく施工体制にありました。地域の職人の高齢化と廃業で、声を掛けられる協力会社が年々減っていく。繁忙期には主要工種の手配が付かず、着工を遅らせた物件が年に数件。関係をつなぐ手段は「仕事を出すこと」と「たまの飲み会」だけで、次のような状態でした。

  • 発注は毎回の相見積で最安値を選ぶ方式。安く出してくれた会社に集中し、価格が合わない会社とは疎遠になっていく
  • どの会社が実際に「良い仕事」をしたのかは、担当者の記憶の中だけ。会社としての評価は存在しない
  • 協力会社側から見たN建設工業は「仕事はくれるが、次がいつあるか分からない客」。優先度は高くない
  • 若い職人を育てている会社と、そうでない会社の区別なく、単価だけで発注していた

決定打は、長年付き合いのあった型枠業者の廃業でした。挨拶に来た社長の「息子に継がせるほどの先の見通しが、正直なかった」という言葉が、経営者に「うちは選ぶ側のつもりで、選ばれる努力をしてこなかった」という反省を促したといいます。

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方針: 発注先から「施工体制のパートナー」へ

N建設工業が組んだ仕組みは、評価・対話・発注方針の3点セットです。

取り組み1: 完工ごとの協力会社評価(4項目・5分)

物件の完工時に、担当した施工管理者が協力会社ごとに4項目を5段階で評価する運用を始めました。項目は、品質(手直しの少なさ)、安全(ルール遵守・職長の機能)、工程(約束の遵守・応変対応)、連携(連絡・書類・他職種との協調)。1社あたり5分で終わる粒度に抑え、自由記述は「特筆すべき良かったこと・困ったこと」を一言だけとしました。

評価は懲罰のためではなく、記憶を記録に変えるためのものです。担当者の頭の中にあった「あそこの職長は段取りがいい」が、会社の共有資産になりました。

取り組み2: 主要協力会社との年1回の個別対話

評価上位の主要20社と、年1回30分の個別面談を設けました。議題は3つ。今年の評価の共有(良かった点を具体的に伝える)、来年の発注見通し(受注済み・見込み物件の工程感)、そして相手からの要望です。

この「発注見通しの共有」が、最も効いたとN建設工業は振り返ります。協力会社にとって最大の経営リスクは仕事の断絶です。数か月先の見通しを示してくれる元請は、単価が最高でなくても優先すべき客になります。実際、面談を始めた翌年から、繁忙期の「N建設工業さんの仕事なら空けます」という反応が明らかに増えました。

取り組み3: 発注方針の明文化「最安値だけで選ばない」

相見積は継続しつつ、発注の判断基準を「価格と評価の総合」に改めました。評価の高い会社には、多少の価格差なら継続発注する。逆に評価の低い会社には、理由を伝えて改善を求め、変わらなければ発注を絞る。見積査定の考え方で言う「安値の3つの顔」を、評価データで見分けられるようになった形です。

あわせて、支払いと書類の事務を整えました。支払サイトの短縮、注文書・請書の電子化、現場での駐車場・詰所の環境改善。「選ばれる元請」の条件は、単価以外のところにも多くあります。

評価シートの実物イメージ

運用している評価は、表計算の1シートです。行に協力会社、列に物件名・工種・4項目の評価(5段階)・一言メモ・評価者・日付。完工時に施工管理者が入力し、会社別の平均と件数が自動で集計されます。

設計で意識したのは「5分で終わること」と「一言メモを必須にすること」の2点です。点数だけでは、年1回の面談で具体的に伝えられません。「養生の復旧が毎回確実だった」「片付けが弱く2回指摘」という一言が、対話の材料になります。逆に、コメント欄を長文で求めると入力が止まるため、一言に制限しました。

また、評価は担当者の主観で構わないと割り切っています。目的は精密な採点ではなく、記憶の記録化と傾向の把握です。同じ会社に低評価が2物件続けば、それは主観の偏りではなく傾向として扱う。この割り切りが、運用を軽く保っています。

効果(2年間の変化)

指標導入前導入2年後
職人手配が付かず着工遅延年2〜3件0件
主要工種の見積辞退率上昇傾向大幅に低下
完工評価の蓄積なし延べ38物件・約240件
手直し(是正)の多い会社への対応感覚頼み評価に基づく改善要請・入替え

数字にならない変化として、協力会社からの持ち込み情報が増えました。「あの物件、入札があるらしい」「良い型枠の若手チームが独立した」。パートナーとして扱われた会社は、情報でも応えてくれる。施工体制の強さが、営業力にまで波及した2年間でした。

つまずきと学び

  • 評価のばらつき: 導入初期、担当者によって評価の辛さが違い、社間比較が歪みました。半期ごとに評価者間で「基準合わせの会」を開き、実例で目線を揃えて解消しています
  • 低評価の伝え方: 改善要請が「ダメ出し」になり、1社と関係がこじれかけました。以後、面談では良い点を先に、改善点は「次も頼みたいから伝える」という文脈で話す作法を徹底しています

N建設工業からの3つのアドバイス

  1. 評価から始めず、対話から始めない: 順序が大事です。評価の記録がない状態で面談をしても、話す材料が「印象」しかなく、社交辞令で終わります。半年〜1年評価を溜めてから面談を始めると、初回から具体的な対話になります
  2. 発注見通しは「不確実なまま」共有してよい: 確定情報だけ伝えようとすると、共有できるものがなくなります。「受注確度半分の案件が春にある」でも、協力会社にとっては体制を考える貴重な材料です。外れたときは正直に詫びれば、信頼はむしろ深まります
  3. 窓口を経営者が持つ: 主要20社との面談は、担当者任せにせず経営者・役員が同席しています。「社長が直接話を聞く元請」という事実そのものが、地域の協力会社ネットワークでの評判になり、新規の職人チームの紹介にもつながりました

経営者の振り返り

「職人不足は、うちだけでは解決できない社会の問題です。でも『不足する職人が、どの元請の仕事を選ぶか』は、うちの努力で変えられる問題でした。評価と対話はそのための道具です。単価を叩いて瞬間の利益を取るより、選ばれる元請であり続ける方が、長い目で見てずっと安い。そう確信しています」

まとめ

N建設工業の事例は、職人不足の時代の協力会社管理が「選ぶ技術」から「選ばれる経営」へ移っていることを示しています。評価で記憶を記録に変え、対話で見通しを共有し、発注方針で誠意を形にする。施工体制は、繁忙期に突然は作れません。平時の積み立てだけが、いざという時の現場を動かします。まずは次の完工物件から、5分の評価シートを1枚つけるところから始めてみてください。査定・発注の実務は協力会社見積の査定のやり方もあわせてご覧ください。

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