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建築工事の品質管理計画の立て方|品質計画書の記載項目と重点管理

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建築工事の品質管理計画の立て方|品質計画書の記載項目と重点管理

建築工事の品質管理計画(品質計画)とは、設計図書で要求された品質を満たすために、使う材料、仕上げの程度、性能、精度などの目標と、品質管理の方法・体制を具体的に示すものです。 国土交通省の「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)」(以下「標仕」)では、品質計画を施工計画書の中で定め、その部分は監督職員の承諾を受けることとしています(1.1.2、1.2.2(4))。施工中は、この品質計画に基づいて適切な時期に品質管理を行います(1.3.6)。

実務で機能する品質管理計画のポイントは、全工種を同じ厚さで並べず、その建物で品質リスクが高い項目を「重要管理項目」として絞り、検査と記録を集中させることです。民間工事は特記仕様書と監理者の指示で範囲を確認してください。

【早見表】品質計画書に書く項目

項目書く内容
品質目標標仕・設計図書に定められた工種ごとの基本要求品質を満たすこと、など
品質管理方針施工管理体制、工種別施工計画書での管理方法、下請への周知、設計図書の照査の進め方
重要管理項目重点的に管理する工種・項目と、その管理目標・確認方法
工種別施工計画書の作成予定作成する工種と提出予定時期の一覧
検査立会項目監督職員(民間は監理者)の検査・立会いを受ける項目と時期
写真管理計画撮影する工程・部位と整理の方法

※ 項目の構成は一宮市「施工計画書作成の手引き(建築工事編)」(2025年4月)の品質計画の記載例によります。発注者・工事ごとに求められる項目は異なります。

同じ手引きは、重要管理項目の考慮事項として、設計者や監督職員の指示があったもの、特殊な材料・工法、関連工事が多いもの、将来不具合が起きそうなものを挙げています。

標仕が「品質計画で定める」としている事項の例

標仕には、判定や措置の方法を品質計画で定めるよう求める条文があります。品質計画書は検査の基準そのものを決める書類です。

工種品質計画で定める事項(標仕の項番)
タイル工事引張接着試験が不合格だった場合の措置の方法(11.1.7(3))
金属工事あと施工アンカーの引張試験で確認する強度(14.1.3(1))
塗装工事錆止め塗料の塗付け量・膜厚確認の試験ロットの構成、測定箇所数、合否の判定、不合格ロットの措置(18.1.7)

「全部を管理する計画」は何も管理しない

全工種のチェックリストを網羅した分厚い計画は、現場の時間では回せず、形だけの検印が並ぶ書類になります。むしろ「管理していた証拠が形骸化している」ぶん、たちが悪い。機能する計画は逆に、品質リスクが高い工種を絞り、そこに検査と記録を集中させます。

手順1: 重点管理項目を選ぶ3つの基準

  • 基準1: 失敗したときの是正が困難か: 隠蔽される(配筋・埋設配管・防水下地)、解体しないと直せない(躯体精度・断熱)、建物全体に波及する(杭・基礎)。最優先です。標仕でも隠ぺい部は施工の記録・工事写真等を整備します(1.2.4(4))
  • 基準2: 過去にクレーム・手直しが出ているか: 自社の是正記録・アフター対応記録で、漏水、建具の不具合、床鳴りなど繰り返しているものを重点に入れます
  • 基準3: この建物に固有の難所はどこか: 用途・設計に由来するリスクです。食品工場なら防虫と床の耐薬品性、クリニックなら遮音、狭小地なら躯体精度と納まり、といった具合に、その物件ならではの急所を設計図から読み取ります

それ以外の工種も放置はせず、通常の検査(受入確認・自主検査)で見る、という濃淡をつけます。

手順2: 重点項目ごとに「5W1H」を決める

重点項目が決まったら、項目ごとに管理の中身を具体化します。曖昧さを消すために、次の6要素を表の列にして埋めます。

要素決めること例(外壁タイル)
何を管理対象と欠陥モード浮き・剥落につながる接着不良
いつ検査のタイミング張付け前の下地の確認、張付け中(張付けモルタルの塗置き時間)、張付け完了後
誰が実施者と立会者自主検査は職長、確認は施工管理者、完了時は監理者
どうやって検査方法外観の目視、屋外は全面打診、引張接着試験(標仕では100m2ごと及びその端数につき1個以上、かつ全体で3個以上)
基準は合否判定のよりどころ設計図書・特記仕様書。標仕ではセメントモルタル張りで引張接着強度0.4N/mm2以上かつコンクリート下地の接着界面での破壊率50%以下など(表11.1.2)
記録は残し方検査記録+写真、試験成績書

※ タイルの数値は標仕(令和7年版)11.1.7。有機系接着剤張りは判定条件が異なります。

判定基準は数値を自分で発明せず、設計図書・特記仕様書・標仕やJASS(日本建築学会の建築工事標準仕様書)などの標準類・メーカー基準のどれに拠るかを明記します。ここが曖昧な計画は、検査の場で「これで良いのか」が毎回議論になります。外壁タイルの管理の詳細は外壁タイル工事の施工管理で解説しています。

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手順3: 検査を工程表に埋め込む

品質管理計画が絵に描いた餅になる最大の原因は、検査が工程と接続していないことです。重点項目の検査は、工程表上の検査ポイントとして線の間に明記します。「ボード張りの前に下地検査」「保護コン打設の前に水張り試験」のように、次の工程の着手条件として検査を位置づけると、検査の飛ばしが構造的に起きなくなります。標仕でも、一工程の施工完了時に設計図書への適合を確認して報告し(1.5.4)、検査を受ける流れです(1.5.5)。

監理者・発注者の立会検査は、先方の予定確保が必要です。月間工程を渡す際に、翌月の立会検査予定を一覧で示す運用にすると、日程調整のドタバタが消えます。配筋検査の進め方は配筋検査のチェックポイントも参照してください。

手順4: 記録は「後から証明に使える」形で残す

品質記録の目的は、工事中の管理と、後日の証明(引渡し後の問い合わせ・紛争への備え)です。標仕の「監督職員の検査」も、提出された品質管理記録に基づいて適否を判断するものです(1.1.2)。

  • 検査記録は日付・部位・実施者・判定・是正の有無が1枚で追える形式にする
  • 写真は「どこの何か」が特定できるように、黒板情報と位置図を対応させる
  • 材料の品質証明(ミルシート・出荷証明・試験成績書)は工種別にまとめ、竣工図書の一部として引き継ぐ(ミルシート・品質証明の管理)
  • 試験を行ったときは直ちに記録を作成する(標仕1.2.4(3))

写真整理の負担が大きい場合は、撮影時に分類まで済ませる電子黒板アプリの活用が有効です。運用の実際はCloudCameraの紹介記事で紹介しています。

手順5: 不適合の処理ルールを先に決める

検査で不合格が出たときの動きを、計画段階で決めておきます。決めるのは、是正方法を誰が決定するか(軽微なら現場、構造・防水に関わるものは監理者と協議)、是正の確認者、記録の残し方、そして再発防止をどう次の工区・次の物件に反映するかです。タイルの試験不合格時の措置のように、標仕が品質計画で定めるよう求めるものもあります。疑義が生じたら監督職員と協議します(1.3.6(3))。

不適合の処理ルールがないと、現場は不合格を「なかったこと」にする誘惑に駆られます。逆に、是正が正しく記録される現場は、検査がまじめに機能している現場です。不適合ゼロの検査記録より、不適合と是正が数件記録されている方が、管理の実在を示す証拠として信頼されます。是正の回し方は社内検査と是正管理で解説しています。

用途別: 重点項目の組み方の実例

3つの基準を当てはめた重点構成の例です。

建物用途重点管理項目の例
事務所ビル(新築)杭・基礎、躯体の配筋・かぶり、屋上防水、外壁(タイル・シーリング)、天井内の設備取り合い
共同住宅上記に加えて界壁・床の遮音、バルコニー防水、住戸内の建具調整、専有部の仕上げ精度
食品工場床の耐久性・排水勾配、防虫(開口部・隙間の管理)、天井内の結露対策、衛生区画の納まり
既存ビルの改修既存部の調査記録(アスベスト・下地の劣化)、既存と新設の取り合い、居ながら工事の養生・粉じん

同じ会社でも、建物が変われば重点は変わります。前物件の計画を流用する場合は、基準3(この建物固有の難所)だけは必ず作り直してください。流用してよいのは様式であって、重点の中身ではありません。

監理者と「重点」を共有すると検査が変わる

作った品質管理計画は、社内に留めず、着工時に監理者・発注者へ説明することをおすすめします。公共工事では品質計画は承諾の対象なので、説明の場は必ずあります。理由は2つあります。

第一に、立会検査が重点項目に時間を使う濃淡のある検査になります。第二に、「自分たちでリスクを特定して管理している」と示すことが、以後の協議(工法変更・納まりの提案)を通しやすくします。

説明は、重点項目の一覧と選定理由(過去の不具合データ・この建物の固有条件)を1枚で示せば足ります。

小規模工事への適用

改修や小規模案件では規模を縮めます。重点項目を3つに絞り、A4一枚に5W1Hの表を作り、検査写真の撮影箇所を決めておく。これだけで「品質管理計画がある現場」になります。大事なのは書類の厚さではなく、重点の合意が着工前にあることです。

重点項目は年に一度、実績で見直す

重点管理方式を続けるうえで欠かせないのが、選定の見直しです。年に一度、竣工物件の是正記録とアフター対応の内容を集計し、「重点に入れていなかった工種で不具合が出ていないか」「重点にしたのに効果が出ていない項目はないか」を点検します。不具合の出どころが変われば重点も変わる。この還流があって初めて、品質管理計画は会社のノウハウとして成長していきます。

よくある質問

Q. 品質計画と品質管理の違いは何ですか。 A. 標仕では、品質計画は設計図書が求める品質を満たすための材料・仕上げの程度・性能・精度等の目標と、品質管理・体制を具体的に示すこと、品質管理は品質計画の目標を施工段階で実現するための管理の項目・方法と定義しています(1.1.2)。品質計画に係る部分は監督職員の承諾の対象です(1.2.2(4))。

まとめ

機能する品質管理計画の要件は、リスク基準で重点を絞る、5W1Hまで具体化する、検査を工程に埋め込む、証明に耐える記録を残す、不適合の処理を決めておく、の5つです。標仕が品質計画に委ねている判定や措置も漏らさず書きます。品質管理計画は施工計画書の一章でもあるため、計画書全体の作り方は建築工事の施工計画書の作り方とあわせてご覧ください。

出典・参考

※ 2026年10月1日:冒頭で品質管理計画(品質計画)の定義と承諾の要否を言い切る構成に見直し、重点項目数・説明時間の目安を削り、品質計画書の記載項目の早見表、標仕が品質計画に委ねる事項の表、外壁タイルの検査数量と判定基準、よくある質問、出典を追加しました。

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