建築工事の工程表の作り方|動かせない日から逆算する5手順
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編集・発行:KMC株式会社
建築工事の工程表は、着工日から順に線を引くのではなく、引渡し日・完了検査・受電日などの「動かせない日」を先に置き、そこから逆算して組みます。 手順は、動かせない日を打つ、躯体をサイクル工程で組む、仕上げを順序の原則で並べる、受け渡しの検査を線の間に書く、月間・週間工程に展開する、の5つです。
工期そのものには、著しく短い工期の契約を注文者にも建設業者にも禁じる建設業法第19条の5があり、中央建設業審議会の「工期に関する基準」(令和6年3月最終改定)が工期設定で考えるべき事項を整理しています。
建築工程の遅れの正体は「作業の遅さ」ではない
遅れの多くは職人の手の遅さではなく、順序の設計ミスから生まれます。前の職種が終わらず入れない、決めごとが遅れて発注できない。工程表の良し悪しは、順序と受け渡しの設計の質です。
【早見表】建築工事で使う工程表の種類
| 工程表 | 期間・粒度 | 主な用途 | 誰と使うか |
|---|---|---|---|
| 全体工程表 | 着工から引渡しまで。月単位 | 動かせない日、大きな流れ、クリティカルパス(遅れると全体の工期が遅れる作業のつながり) | 発注者・監理者・社内 |
| 月間工程表 | 1か月。日単位 | 工種ごとの着手・完了日、検査日、大型搬入 | 監理者・協力会社 |
| 週間工程表(3週間工程) | 今週と2週先。日単位 | 人員・搬入・揚重、決めごとと発注の期限 | 職長会 |
| 工種別工程表 | 躯体サイクル、仕上げの階別 | 1フロアのサイクル、職種の受け渡し順 | 職長・担当者 |
表し方は横棒で並べるバーチャートが一般的で、前後関係とクリティカルパスをはっきりさせたい場面では矢線で表すネットワーク工程表を併用します。
手順1: 動かせない日を先に打つ
まず「動かせない日」をカレンダーに打ちます。
- 引渡し日と、その前の検査(完了検査・消防検査・施主検査)の日。完了検査の申請は工事完了の日から4日以内に建築主事等に届くように行い、検査は受理から7日以内に行われます(建築基準法第7条)
- 受電日(電力会社との協議で決まり、ずらしにくい)。「工期に関する基準」も、受電と設備の総合試運転調整の期間を考慮するよう求めています
- エレベーターの据付開始日(メーカーの製作期間から決まる)
- 外部足場の解体日(外壁仕上げの完了が条件になる)
- 上棟(躯体完了)の目標日
点を打つと、区間ごとに使える日数が決まります。「何日欲しいか」ではなく「何日使えるか」から出発するのが逆算です。使える日数が所要日数を下回るなら、体制・工法の変更か工期の協議が必要だと着工前に分かります。
手順2: 躯体はサイクル工程で組む
多層階の躯体は、1フロアを「墨出し→柱壁配筋→型枠→梁スラブ型枠→配筋→設備スリーブ→検査→打設」の流れで回し、階数分繰り返します。このサイクル日数(1フロアを何日で回すか)を決めることが躯体工程の設計そのものです。
サイクル日数は、投入人員、型枠の転用計画、揚重機の能力で決まります。職長と合意してから線を引くこと。合意のないサイクルは最初の階で破綻します。検査日も必ずサイクルに組み込みます。打設の段取りはコンクリート打設計画、検査の中身は配筋検査のチェックポイントをご覧ください。
手順3: 仕上げは順序の原則で並べる
- 水を使う工事・湿式を先に、乾式を後に: モルタル・左官を終えてから、ボード・クロス・床仕上げへ
- 上から下へ、奥から手前へ: 天井→壁→床の順、部屋の奥から出入口へ
- 汚す工事を先に、汚されたら困る工事を後に: 塗装と器具付けの順序が典型です
- 隠す前に検査と写真: ボード張りの前に下地・配管の検査、二重天井を塞ぐ前に天井内の検査
「工期に関する基準」は仕上工事の考慮事項として、前工程の養生期間、季節ごとの気象条件、仕様の未決定や変更、検査・内覧会の日数を挙げ、タイル・塗装は季節や天候で乾燥に要する時間が変わるとしています。原則から外れる並べ方は、養生と手直しの費用増を織り込んで判断します(詳細は内装仕上げの工程)。
手順4: 受け渡しの条件を線の間に書く
線と線の間には「受け渡しの条件」が挟まっています。保護コンクリートの前には防水の水張り検査、ボードの前には下地検査、床仕上げの前には不陸調整。該当位置に記号を振り、欄外に検査内容と実施者を書くだけで「終わったつもり」の手戻りが減ります。監理者立会いの検査は監理者の予定確保も含めて載せ、特定工程の中間検査は動かせない日に準じて扱います(中間検査と特定工程参照)。
手順5: 月間・週間工程に展開する
現場を動かすのは月間・週間工程です。おすすめは3週間工程(今週+2週先)を毎週更新する方式です。
- 1週目: 確定した作業。人員・搬入・揚重の予定まで具体化する
- 2〜3週目: 予定。決めごとの期限、材料の発注期限をここで拾う
材料手配・段取り・決めごとには準備の時間がかかるため、職長会では「来週入るために今週決めるべきこと」の確認に時間を使います。
【チェックリスト】工期設定で考慮する事項
「工期に関する基準」第2章が挙げる、工期全般で考慮すべき事項です。全体工程表に反映されているかを確認します。
- 自然要因: 降雨日・降雪日などの作業不能日
- 休日・法定外労働時間: 週休2日(4週8休)の確保、時間外労働規制を守れる工程か
- イベント: 年末年始・夏季休暇・地元の催事、交通規制がかかる時期、夜間作業の騒音規制
- 制約条件: 搬出入時間・道路の荷重制限、荷揚げ設備の制約、騒音・振動・粉じんへの配慮
- 契約方式: 設計施工一括か、分離発注か
- 関係者との調整: 地元説明会、電力・ガス事業者との協議、図渡し時期、テナント要望の設計変更
- 行政への申請: 道路使用許可、特定建設作業実施届、建設工事届などの期間
- 労働・安全衛生: 安全と健康の確保に必要な期間
- 工期変更: 追加・変更を申し出る期限をあらかじめ決めておく
- その他: 受電と設備の総合試運転調整の期間、他工事との取り合い
同基準は工期を準備・施工・後片付けの3段階に分けています。着工前の準備期間と、引渡し前の自主検査・清掃などの後片付け期間も工程表に入れます。
工期のルール: 建設業法と「工期に関する基準」
- 契約書への記載: 着手・完成の時期と、施工しない日・時間帯の定めを契約書面に記載します(建設業法第19条第1項第3号・第4号)
- 著しく短い工期の禁止: 通常必要な期間に比べ著しく短い工期の契約は、注文者も建設業者も締結できません(同法第19条の5)。違反した発注者には、請負代金が政令で定める額以上の契約について勧告・公表の規定があります(同法第19条の6)
- 見積書の工程: 見積書に工程ごとの作業と準備に必要な日数を記載するよう努めます(同法第20条第1項)
- 工期に影響する事象の通知: 資材の供給減少や価格高騰などのおそれは契約締結までに注文者へ通知し、契約後に起きれば工期変更等の協議を申し出られます(同法第20条の2)
日数不足が分かったら、逆算した工程表を根拠に工期を協議します。「工期に関する基準」も、追加工事・設計変更などで当初工期で施工できない場合は、工期延長を含めて協議・合意のうえ進める必要があるとしています。
遅れたときのリカバリー手段には優先順位がある
遅れは必ず起きます。リカバリー手段は副作用の小さい順に検討します。
- 工区を分けて並行させる: 同一階を2工区に割り、仕上げを追いかけで進める。副作用は比較的小さい手です
- 作業順序の組み替え: クリティカルパス上の作業を先行させ、パス外を後ろへ動かす
- 人員・班数の増強: 作業場所が確保できる工種に限ります
- 休日作業・残業: 費用・安全リスク、近隣協定、時間外労働の上限規制への影響を確認してから
- 工期の協議: 発注者起因の遅れ(決定遅延・追加変更)が混ざっているなら、記録を揃えて工期延長を協議します
どの手を使ったかと効果を記録すると、次の工事の工程精度が上がります。
ありがちな失敗3つ
- 希望的サイクルで組む: 合意なしの短いサイクルは、実績が出た時点で全面書き直しになります。最初の1フロアの実績で検証し、早めに補正します
- 決めごとの期限が工程表にない: 色決め・仕様決定・追加変更の回答期限も線で管理します
- 余裕を最後にまとめて置く: 竣工前の予備日に途中の遅れが吸い込まれ、検査と是正が渋滞します。予備は上棟後や足場解体前など節目に分散します
工程表の更新は「悪い報告」を早くする仕組み
最も価値があるのは遅れの早期申告です。当日分かった遅れには残業と突貫しかありません。週次で実績線を入れて遅れを色で見せ、報告を責めない運用にします。
週間工程会議のアジェンダを固定する
週1回の職長会は、アジェンダを固定すると短時間で回ります。
- 先週の実績確認: 終わらなかった線と理由(責めないで聞く)
- 今週の作業と取り合い: 作業がぶつかる箇所、上下作業の調整
- 受け渡し確認: 今週の検査と、検査前に終わらせるべき作業
- 3週間先の準備: 発注期限・決めごと期限・搬入予約
- 安全事項: 揚重・火気・開口のリスク共有
会議で決めた変更は必ず工程表に反映します。会議と工程表が別物になると、職長は工程表を見なくなります。
よくある質問
Q. 建築工事の工程表はどの順番で作りますか。 A. 動かせない日を先に置き、躯体のサイクル、仕上げの順序、受け渡しの検査の順に組み、月間・週間工程へ展開します。
Q. 工期が短すぎる場合はどうすればよいですか。 A. 建設業法第19条の5は著しく短い工期の契約を双方に禁じています。逆算した工程表で不足日数を示して協議を申し入れます。「工期に関する基準」によると、各地方整備局等の駆け込みホットラインにも相談できます。
まとめ
動かせない日から逆算し、躯体はサイクルで、仕上げは順序の原則で、受け渡しには検査を挟み、3週間工程で運転する。日数が足りなければ建設業法と「工期に関する基準」を踏まえて協議する。工程と原価は連動するため実行予算書の作り方を、竣工前の段取りは竣工検査と引渡しもご覧ください。
出典・参考
- 建設業法(第19条、第19条の5、第19条の6、第20条、第20条の2): https://laws.e-gov.go.jp/law/324AC0000000100
- 建築基準法(第7条): https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000201
- 中央建設業審議会「工期に関する基準」(令和2年7月作成、令和6年3月27日最終改定): https://www.mlit.go.jp/report/press/tochi_fudousan_kensetsugyo13_hh_000001_00234.html
- 国土交通省「建設工事における適正な工期設定等のためのガイドライン」: https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/totikensangyo_const_tk1_000156.html
※ 2026年10月1日:冒頭で工程表の作り方を言い切る構成に見直し、出典で確かめられない日数の記述を削り、工程表の種類の早見表・工期設定のチェックリスト・建設業法と「工期に関する基準」の工期のルール・よくある質問・出典を追加しました。
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