総合仮設計画とは|建築工事の計画図の書き方と7つの検討項目
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編集・発行:KMC株式会社
総合仮設計画とは、建築工事を進めるために必要な仮の設備(搬入経路・仮囲い・揚重機・外部足場・仮設事務所・仮設電気水道・場内動線)を、敷地全体で1つの計画にまとめたものです。 その成果物が総合仮設計画図で、施工計画書に載せる仮設計画図の本体になります。国土交通省の公共建築工事標準仕様書も、工事の着手に先立って工事全般の総合的な計画(総合施工計画書)を作成して提出するよう定めています(1.2.2)。
決め方のコツは順序を固定すること、原則は「敷地の外から内へ」です。この記事では、その順序に沿って7つの検討項目と、計画図の書き方、関係する法令・届出を解説します。
仮設計画は「決める順序」を間違えると手戻りする
いきなり敷地図にクレーンや事務所を描き始めると、後から「生コン車が着けられない」「足場と揚重が干渉する」と手戻りします。外部条件(道路・近隣)は自社で動かせない制約であり、制約の強いものから決めるのが計画の定石です。
項目1: 搬入経路と車両計画(敷地の外)
- 前面道路の幅員と交通量、通学路指定の有無、時間帯規制
- 大型車(生コン車・トレーラー・ポンプ車)が曲がれる交差点か。搬入経路上の高さ制限・重量制限
- 敷地への出入口の位置。歩道の切り下げや乗り入れ養生の要否
- 車両を敷地内に取り込めない場合の、道路上での荷下ろしの可否(所轄警察署への道路使用の相談)
ここで判明した制約(大型車不可、時間帯限定など)は、揚重計画にも工程計画にも波及します。現地調査では、朝夕の交通状況と、近隣の店舗・学校・病院の位置も見ておきます。
項目2: 仮囲いとゲート
敷地境界に沿って、仮囲いの範囲と高さ、ゲートの位置・幅を決めます。木造以外で2階以上の建築物などの工事では、高さ1.8m以上の仮囲いが建築基準法施行令で求められます(下の早見表)。ゲートは車両出入口と人の通用口を分けるのが原則で、搬入経路と場内動線の結節点なので項目1とセットで決まります。歩行者の安全と、第三者の侵入防止(施錠・夜間管理)もここで計画します。
項目3: 揚重機の選定と配置
建築仮設計画の心臓部です。タワークレーンか、移動式クレーンの繰り返し据付か、ロングスパンエレベーターや工事用リフトをどう組み合わせるかを、次の材料で判断します。
- 建物の高さ・平面の大きさと、最重量物(鉄骨・PC部材・設備機器)の重さ
- クレーンの作業半径で建物全体と資材置場をカバーできるか
- 設置位置の地耐力と、基礎・埋戻し部の上に据える場合の補強
- 隣地・道路上空への旋回(ブームが越境しないか、越境する場合の隣地承諾)
- 解体方法(タワークレーンは「どう降ろすか」まで決めて初めて計画になります)
揚重計画は費用も大きく、工程(サイクル日数)を直接決めます。複数案の比較(費用×工程×リスク)を作り、社内で決めるのが定石です。運用段階の安全管理は揚重作業の安全対策を参照してください。
項目4: 外部足場と養生
外部足場の種別(枠組・くさび式・次世代足場)、朝顔(防護棚)の位置、メッシュシートの仕様を決めます。管理上の要点は、足場と揚重の干渉(荷取り用の開口をどこに設けるか)と、足場の存置期間(外壁仕上げの工程と解体日の整合)の2つです。市街地では、朝顔や足場が歩道上空に出るかどうかで道路占用の手続きが関係するため、協議事項を早めに洗い出します。
項目5: 仮設事務所・詰所・資材置場(敷地の内)
残った敷地に、仮設事務所、職人詰所、トイレ、資材置場、加工場を配置します。
- 事務所は現場が見える位置が理想。敷地に置けなければ近隣の借地・借家も検討します
- 資材置場は「置く」より「回す」で考えます。置場が小さいなら、搬入の小口化に切り替えます(その分の搬入回数増と揚重の負担も見込む)
- 加工場を場外にするか場内にするかで、置場の所要が大きく変わります
項目6: 仮設電気・仮設水道
受電容量(揚重機・溶接・冬期の養生ヒーターまで見込む)、引き込み位置、分電盤の配置、仮設水道と排水(沈砂槽)を計画します。電力会社・水道局への申請はリードタイムが長いため、着工前のなるべく早い段階で申し込みます。本設への切り替え時期も、工程表の「動かせない日」として最初から意識しておきます。
項目7: 場内動線と安全の重ね合わせ
最後に、人の動線・車の動線・揚重の動線を1枚の図に重ねます。見るのは交差です。車両動線と人の通路の交差、吊り荷の旋回範囲と通路の重なり、朝の入場と搬入の時間帯の重なり。交差が見つかったら、位置を変えるか、時間で分けるか、物理的に仕切るかで解消します。この「重ね合わせ図」が総合仮設計画の完成形です。
総合仮設計画図の書き方チェックリスト
計画図に次が描かれているかを、社内レビューの前に確認します。
- 敷地境界・前面道路(幅員)・搬入経路と出入口・近隣の主要施設
- 仮囲いの範囲と高さ、車両ゲートと通用口の位置
- 揚重機の位置、作業半径、ブーム・カウンターウェイトの旋回軌跡(隣地・道路上空への越境の有無)
- 外部足場の範囲、朝顔の位置、荷取りステージ
- 仮設事務所・詰所・トイレ・資材置場・加工場
- 受電位置・分電盤・給水・排水(沈砂槽)
- 人・車両・揚重の動線と、その交差箇所の対策
- 上空の架空電線の位置と高さ方向の検討
- 工事の最盛期(鉄骨建方など)の配置図を別に作ったか
【早見表】総合仮設計画で確認する主な法令・届出
| 対象 | 内容(要旨) | 根拠 |
|---|---|---|
| 仮囲い | 木造で高さ13m超または軒高9m超、木造以外で2階以上の建築物の工事は、高さ1.8m以上の板塀等の仮囲い(同等以上の囲いがある場合等を除く) | 建築基準法施行令 第136条の2の20 |
| 落下物の防護 | 境界線から水平5m以内かつ高さ7m以上で工事をする場合等は、鉄網・帆布で覆う等の措置 | 同 第136条の5第2項 |
| 資材の集積 | 倒壊・崩落の危害が少ない場所に置く。山留めの周辺や架構の上には予定した荷重以上をかけない | 同 第136条の7 |
| 足場の計画届 | 高さ10m以上の足場(つり足場・張出し足場は高さを問わない)は、工事開始の30日前までに労働基準監督署長へ届出。組立てから解体まで60日未満のものは除く | 労働安全衛生法 第88条、労働安全衛生規則 第85条・別表第7 |
| クレーンの設置届 | つり上げ荷重3t以上のクレーンは設置届と落成検査 | 労働安全衛生法施行令 第12条、クレーン等安全規則 第5条・第6条 |
| 道路使用 | 道路で工事・作業をするときは所轄警察署長の許可 | 道路交通法 第77条 |
| 道路占用 | 工事用板囲・足場・詰所や工事用材料を道路に置くときは道路管理者の許可 | 道路法 第32条、道路法施行令 第7条 |
届出が必要かどうかと提出先は、規模と工事内容で変わります。発注者の仕様書(公共建築工事では標準仕様書の特記)と所轄の窓口で確認してください。
仮設計画は費用とセットで確定させる
仮設計画は、実行予算の共通仮設費に数量と金額で落とし込んで初めて確定します(共通仮設費と現場管理費も参照)。
- 期間で発生する費目: 揚重機・仮設事務所・仮囲い・警備は、月額×存置期間で積みます。工期が延びれば増える費目です
- 回数で発生する費目: 移動式クレーンの据付回数、足場の盛替え、乗り入れ養生の復旧など
- 一式に隠れがちな費目: 電力会社への申請費・引込費、沈砂槽と排水処理、道路占用・使用の手数料、隣地借地料
手戻りの実例から学ぶ3つの落とし穴
- クレーンの旋回が隣地上空に入っていた: 作業半径だけでなくブーム・カウンターウェイトの軌跡まで図で検証します
- 朝顔と架空電線が干渉した: 現地調査で「上空」を撮っておくことが予防策です
- 仮設事務所が搬入動線を塞いだ: 配置は「工事の最盛期の車両」で検証しておきます
共通するのは、平面図だけで考えて高さ方向と時間方向の検証を省いたことです。仮設計画は3次元+時間の計画だと意識するだけで、この種の手戻りは減らせます。
狭小地のやりくり: 3つの発想
- 時間で解決する: 資材は溜めずに回す。搬入予約制で車両を分散する
- 場外で解決する: 加工場・置場・駐車場を場外に借りる。費用と、場内の混雑による非効率・災害リスクを比較して判断する
- 建物を使う: 躯体が進んだら、建物内の一部を置場・詰所に転用する計画をあらかじめ組み込む(床の耐荷重と養生の確認をセットで)
まとめ
総合仮設計画は、搬入経路→仮囲い→揚重→足場→事務所・置場→仮設設備→動線の重ね合わせ、と敷地の外から順に決めるのが定石です。計画図はチェックリストで抜けを確認し、仮囲い・足場・クレーン・道路の届出を早めに洗い出します。決めた計画は数量とともに実行予算の共通仮設費へ落とし込みます。予算への展開は実行予算書の作り方を参照してください。
出典・参考
- 建築基準法施行令(e-Gov法令検索)第136条の2の20・第136条の5・第136条の7: https://laws.e-gov.go.jp/law/325CO0000000338
- 労働安全衛生法(e-Gov法令検索)第88条: https://laws.e-gov.go.jp/law/347AC0000000057
- 労働安全衛生規則(e-Gov法令検索)第85条・別表第7: https://laws.e-gov.go.jp/law/347M50002000032
- 労働安全衛生法施行令(e-Gov法令検索)第12条: https://laws.e-gov.go.jp/law/347CO0000000318
- クレーン等安全規則(e-Gov法令検索)第5条・第6条: https://laws.e-gov.go.jp/law/347M50002000034
- 道路交通法(e-Gov法令検索)第77条: https://laws.e-gov.go.jp/law/335AC0000000105
- 道路法(e-Gov法令検索)第32条: https://laws.e-gov.go.jp/law/327AC1000000180
- 道路法施行令(e-Gov法令検索)第7条: https://laws.e-gov.go.jp/law/327CO0000000479
- 国土交通省「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」1.2.2 施工計画書: https://www.mlit.go.jp/gobuild/content/001888816.pdf
※ 2026年9月30日:総合仮設計画の定義を冒頭に加え、計画図の書き方チェックリストと、仮囲い・足場・クレーン・道路の法令と届出の早見表、出典を追加しました。
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