建設業務改善Navi
安全・法規・資格約21分で読めます

建設業許可(建築一式)の要件|5つの基準と許可範囲の落とし穴

公開日:最終更新日:

編集・発行:

建設業許可(建築一式)の要件|5つの基準と許可範囲の落とし穴

建築一式工事で建設業許可が必要になるのは、1件の請負代金が1,500万円以上の工事、または延べ面積150m2以上の木造住宅の工事を請け負うときです(建設業法第3条、同法施行令第1条の2)。 許可を受けるには、経営業務の管理責任者(常勤役員等)、営業所技術者、誠実性、財産的基礎、適切な社会保険への加入という基準を満たし、欠格要件に当たらないことが必要です(同法第7条・第8条)。

さらに、元請として1件の工事で下請に出す金額の総額が8,000万円以上(建築一式工事以外は5,000万円以上)になるなら、一般建設業ではなく特定建設業の許可が要ります(令和7年2月1日施行の改正後の金額)。以下、要件を自己診断できる形に整理し、誤解の多い「建築一式」の許可範囲と申請・維持の実務を解説します。要件の細部と必要書類は許可行政庁の手引きが正です。

【早見表】建築一式の建設業許可で押さえる数字

項目内容(根拠)
許可が不要な「軽微な建設工事」建築一式工事は1件の請負代金が1,500万円未満、または延べ面積150m2未満の木造住宅工事。それ以外の工事は500万円未満(法第3条第1項、令第1条の2第1項)
請負代金の数え方消費税相当額を含む。正当な理由なく契約を分割しても合計額で判断。注文者が材料を支給する場合はその市場価格(運送費を含む)を加える(令第1条の2第2項・第3項)
特定建設業が必要な場合発注者から直接請け負った1件の工事で、下請契約の総額が8,000万円以上(建築一式工事以外は5,000万円以上)(法第3条第1項第2号、令第2条)
大臣許可と知事許可2以上の都道府県に営業所を置くなら国土交通大臣、1の都道府県だけなら知事。施工できる区域に制限はない
許可の有効期間5年間。更新は有効期間満了の30日前までに申請
業種の数29業種(建築一式工事に対応する許可業種は「建築工事業」)

特定建設業の基準は令和7年2月1日の改正で4,500万円(建築一式は7,000万円)から引き上げられました。元請の施工体制台帳の作成義務も同じ金額で決まります。

許可は「取れるか」の前に「何のために取るか」

1,500万円以上の建築一式工事を受けたい、元請や金融機関の信用を得たい、公共工事に備えたい。動機を確かめたら、一般と特定のどちらが要るかを決めます。分かれ目は請け負う金額ではなく、元請として下請に出す金額です(下請代金に元請が提供する材料等の価格は含みません)。発注者から直接請け負う金額に上限はなく、大半を自社で施工して下請総額が常に8,000万円未満(建築一式工事の場合)に収まるなら、一般建設業の許可で足ります。

最大の誤解: 「一式許可があれば全部できる」ではない

先に、建築一式の落とし穴から片づけます。建築工事業の許可は、「あらゆる工事を請け負える万能許可」ではありません。建築一式工事とは、総合的な企画・指導・調整のもとに建築物を建設する工事、つまり元請として建物全体をまとめる工事を指します。

したがって、内装だけ、屋根だけといった専門工事を単独で請け負う場合は、その工事が500万円以上なら、内装仕上工事業・屋根工事業など当該専門工事業の許可が別に必要になります。「一式を持っているから内装工事も無制限に受けられる」という理解は誤りです。

例外は附帯工事(ふたいこうじ:主たる工事の施工に伴って必要になる従たる工事)です。許可を受けた業種の工事に附帯する他業種の工事は請け負えます(法第4条)。ただし軽微な工事でない限り、その業種の許可を持つ業者に下請に出すか、その業種の技術者を自ら置いて施工する必要があります(法第26条の2第2項)。それ自体が独立した使用目的を持つ工事は附帯工事に当たりません。自社の実際の受注構成(元請の一式工事か、専門工事の単独受注か)を眺めて必要な業種を判断することが、申請前の最初の仕事です。

PattoAI

実行予算の作成や数量の拾い出しに、毎回時間を取られていませんか?

図面からの数量拾い出し・実行予算書・施工計画書の作成にかかる時間を、PattoAI で大幅に短縮できます。

取得前の自己診断: 5つの要件を順に確かめる

許可の基準は次の5つの観点で審査されます(法第7条、特定建設業は法第15条)。それぞれ、自己診断の問いに直して示します。

診断1: 経営業務の管理体制はあるか(法第7条第1号)

常勤役員等(法人は常勤の役員、個人は本人または支配人)に、建設業に関し5年以上経営業務の管理責任者としての経験を持つ人がいるかが代表的なルートです(準ずる地位での経験や、補佐者を置く体制などの別ルートもあります)。問いは「該当する人がいるか。その経験を登記事項・確定申告書・契約書等で証明できるか」。つまずくのは要件より証明書類なので、早い段階で棚卸ししてください。

診断2: 営業所に営業所技術者を置けるか(法第7条第2号、第15条第2号)

営業所ごとに、一定の資格または実務経験を持つ技術者を専任で置く必要があります。この技術者は、令和6年12月13日施行の改正で「専任技術者」から「営業所技術者」(特定建設業は「特定営業所技術者」)に名称が変わりました。

一般建設業では、1級・2級建築施工管理技士や建築士などの国家資格のほか、指定学科の卒業と実務経験(大学・高専卒は3年以上、高校卒は5年以上)、または10年以上の実務経験でも要件を満たせます。建築工事業は「指定建設業」なので、特定建設業の特定営業所技術者は1級の国家資格者(または国土交通大臣の特別認定者)に限られ、実務経験だけでは認められません。

問いは「資格者がいるか。いない場合、実務経験の年数を証明する書類(工事の契約書・注文書等)を揃えられるか」。資格者の在籍は採用・育成と直結するため、資格取得支援は許可維持の観点でも投資価値があります。資格の違いは建築士と施工管理技士の違いもご覧ください。

診断3: 誠実性・欠格要件に該当しないか(法第7条第3号、第8条)

法人・役員等・令第3条の使用人(支店長・営業所長など)が、請負契約に関して不正または不誠実な行為をするおそれが明らかな者でないこと、そして欠格要件(申請書の虚偽記載、破産者で復権を得ない者、禁錮以上の刑の執行を終えて5年を経過しない者、暴力団員等など)に当たらないことが求められます。

診断4: 財産的基礎はあるか(法第7条第4号、第15条第3号)

区分基準(いずれか/すべて)
一般建設業(いずれかに該当)自己資本の額が500万円以上/500万円以上の資金を調達する能力がある/許可申請前の過去5年間、許可を受けて継続して営業した実績がある
特定建設業(すべてに該当)欠損の額が資本金の額の20%を超えていない/流動比率が75%以上/資本金の額が2,000万円以上かつ自己資本の額が4,000万円以上

問いは「直近の決算書がこの基準を満たすか。満たさない場合、増資などの対応の余地はあるか」。建設業の決算書の読み方や資金繰りを含め、財務は許可の土台でもあります。

診断5: 社会保険等に適切に加入しているか(法第7条第1号)

健康保険・厚生年金保険・雇用保険について、適用事業所に当たるすべての営業所で届出をしていることが許可の基準です。未加入があれば、申請前に整えます。

申請準備の進め方: 書類集めが本体

診断を通過したら申請準備です。申請書の作成より証明書類の収集が本体です。

  1. 手引きの入手と通読(許可行政庁のサイトで公開されています)
  2. 経営経験・実務経験の証明書類の収集(過去の契約書・注文書・請求書。年数分を揃えるのが最大の山です)
  3. 登記事項・納税・財務諸表・社会保険の届出など法人関係書類の準備
  4. 申請書類一式の作成と、行政庁窓口での事前相談
  5. 申請・審査(標準処理期間は行政庁により異なります)

相談先の使い分け: 行政庁・行政書士・団体

  • 許可行政庁の窓口: 要件の解釈・書類の適否の最終判断を持つ相手です。「この書類で経験証明になるか」は事前相談で確かめる方が、補正の繰り返しより早道です
  • 行政書士: 書類収集と申請の代行者。経験証明が複雑なケースや役員構成の整理が必要なケースで、手戻りが大きく減ります
  • 建設業協会・商工団体: 講習会・相談会の情報源。同業の取得経験談が聞ける場でもあります

副産物の価値: 許可準備は会社の体制整備そのもの

5つの要件は会社の基礎体力の点検項目そのものです。経営経験の証明で契約書類が整理され、営業所技術者の確保で資格者の育成計画が立ち、財産的基礎の確認で決算と資金繰りに向き合い、社会保険の整備で雇用の土台が固まる。経審や公共工事への参入を将来視野に入れるなら、なおさらこの基礎体力が土台になります。

取得はゴールではない: 維持の義務を最初から設計する

許可取得後には継続的な義務が伴います。毎事業年度終了後4か月以内の決算変更届、役員・営業所技術者等の変更届(経営業務の管理責任者や営業所技術者等の変更は2週間以内、その他の多くは30日以内)、5年ごとの更新、そして工事現場への主任技術者・監理技術者の配置や施工体制台帳の整備といった建設業法上の義務の遵守です。現場の技術者配置は監理技術者・主任技術者の配置ルールで解説しています。

とくに営業所技術者の退職は、許可の維持に直結するリスクです。「資格者が1人しかいない」状態を放置せず、後継の育成を許可維持の計画として持っておきます。

よくある質問

Q. 建築一式工事で許可がいらないのはいくらまでですか。 A. 1件の請負代金が1,500万円未満(消費税込み)の工事、または延べ面積150m2未満の木造住宅工事です。木造住宅の「住宅」には、延べ面積の2分の1以上を居住用とする併用住宅も含まれます。

Q. 建築工事業の許可があれば内装工事も請け負えますか。 A. 内装工事を単独で500万円以上請け負うなら、内装仕上工事業の許可が別に必要です。建築一式工事に附帯する内装工事であれば請け負えます。

まとめ

建築一式の建設業許可は、1,500万円以上(または延べ面積150m2以上の木造住宅)の工事を請け負うときに必要です。5つの要件で自社の現在地を確かめ、証明書類の収集を本体と捉えて準備する。「一式」は万能許可ではないこと、下請総額8,000万円以上なら特定建設業が要ること、取得後は届出と更新の義務が始まることまで含めて設計してください。

出典・参考

※ 2026年10月1日:冒頭で許可が必要な金額と要件を言い切る構成に見直し、「専任技術者」を現行の名称「営業所技術者」に改め、許可で押さえる数字の早見表・財産的基礎の表・よくある質問・出典を追加しました。

お悩み別 おすすめサービス

いまの課題に近いものはどれですか?

選んだお悩みに最適なサービスのご案内ページへ移動します。

無料デモで確認する(オンライン30分)

2営業日以内に担当者からご連絡します。無理な営業はいたしません。

あわせて読みたい関連記事