根切り・埋戻しの施工管理|建築の掘削基準と深さ別の要点
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編集・発行:KMC株式会社
建築の根切り(基礎をつくるための掘削)・埋戻しの施工管理の要点は、掘削面の高さが2m以上となる地山の掘削では地山の掘削作業主任者を選任し、深さ1.5m以上の根切りでは原則として山留めを設け、根切り底(床付け面)を乱さずに検査を受け、埋戻しは300mm程度ごとに締め固めることです。 根拠は労働安全衛生法施行令第6条第9号・労働安全衛生規則(以下「安衛則」)第359条、建築基準法施行令(以下「建基令」)第136条の3第4項、国土交通省「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)」(以下「標仕」)3.2.1・3.2.3です。
根切りと埋戻しは、竣工後には完全に見えなくなる工事です。床付け面の乱れも締固め不足も、後になって沈下として姿を現し、掘り返して確かめることは事実上できません。この記事では、掘削が深くなるほどリスクの種類が増えるという視点で、基準と管理を深さの順に整理します。
【早見表】深さ・条件ごとの主な基準
| 条件 | 基準 | 根拠 |
|---|---|---|
| 掘削の前 | 地山の崩壊・埋設物の損壊等のおそれがあるときは、地質・地層、き裂・湧水・凍結、埋設物等を調査し、掘削の時期と順序を定める | 安衛則第355条 |
| 基礎工事全般 | 地下のガス管・ケーブル・水道管・下水道管の損壊による危害を防止する措置を講じる | 建基令第136条の3第1項 |
| 深さ1.5m以上の根切り | 地盤が崩壊するおそれがない場合等を除き、山留めを設ける | 建基令第136条の3第4項 |
| 掘削面の高さ2m以上 | 技能講習修了者から地山の掘削作業主任者を選任し、作業を直接指揮させる | 施行令第6条第9号、安衛則第359条・第360条 |
| 手掘りの掘削面の勾配 | 岩盤・堅い粘土は高さ5m未満90度以下、5m以上75度以下。その他の地山は2m未満90度以下、2m以上5m未満75度以下、5m以上60度以下。砂は35度以下または高さ5m未満 | 安衛則第356条・第357条 |
| 点検 | 点検者を指名し、作業開始前、大雨の後、中震以上の地震の後に、浮石・き裂、含水・湧水・凍結の状態の変化を点検 | 安衛則第358条 |
| 埋戻し | 材料・工法は特記による。特記がなければA種(山砂の類)〜D種(再生コンクリート砂)から特記で選び、300mm程度ごとに締め固める | 標仕3.2.3 |
安衛則第356条の勾配は、掘削機械を使わない「手掘り」の基準です。機械掘削でも崩壊のおそれがあるときは、土止め支保工・立入禁止等の措置が必要です(安衛則第361条)。標仕は公共建築工事の仕様書なので、民間工事では特記仕様書と監理者の指示で確認してください。
深さゼロの段階: 掘る前に決まっていること
- 地盤情報の読み込み: 地盤調査報告書から、土質・地下水位・支持層の深さを頭に入れます。地階の根切りなど深い根切りは、地盤調査に基づく施工図によることが求められています(建基令第136条の3第2項)
- 埋設物の調査: 旧建物の基礎・浄化槽・井戸、前面道路からの引き込み管。着工前調査での試掘・埋設探査が、掘削中の「まさか」を減らします
- 掘削計画: 法面の勾配または山留めの要否、重機と土運搬の運行経路(定めて周知、安衛則第364条)、残土の処分先。深さと敷地条件に応じた計画は、安全とコストの両方を決めます
- 作業主任者の手配: 掘削面の高さ2m以上なら地山の掘削作業主任者、山留めの切りばり・腹起しの取付け・取外しがあれば土止め支保工作業主任者も必要です(施行令第6条第10号)
浅い掘削(人の腰まで): 「浅いから大丈夫」が最初の落とし穴
腰の高さ程度でも、崩れた土に埋まれば人は動けなくなり、埋設物の損傷事故はむしろ浅い層で起きます。
- 掘削機械で地下の工作物を損壊するおそれがあるときは、機械を使ってはなりません(安衛則第363条)。埋設表示の近くは手掘りに切り替えます。露出したガス導管は、つり防護・受け防護または移設を指揮者のもとで行います(第362条)
- 基礎梁・ピットの間の狭い掘削は法面が立ちがちです。浅くても崩れる条件(雨後・砂質土)を朝礼で共有します
- 掘った穴の縁は転落箇所です。夜間・休日の区画と表示まで管理します
床付け面: この工事の品質のすべてが宿る場所
床付け面(標仕でいう根切り底)は、建物の荷重を最初に受け止める地盤面です。
- 乱さない: 地盤をかく乱しないように掘削し、乱した場合は監督職員(民間では監理者)の承諾を受けて、自然地盤と同等以上の強度となるよう措置します(標仕3.2.1(5))
- 確認する: 状態・土質・深さを確認して検査を受け、設計図書の支持地盤と異なる場合は協議します(同(7))。想定と違う土が出たら、掘り進める前に設計者へ連絡。ここで立ち止まれるかが、施工管理者の力量です
- 濡らさない・凍らせない: 雨水が溜まると地盤は緩みます。速やかに捨てコンへ移行し、凍結による支障も防ぎます(同(6))
- 記録する: 状態・レベル・地質の写真は隠蔽部記録の最重要項目です。床付け検査の記録とセットで残します
深い掘削: 水と隣地が主役になる
- 湧水・地下水: 釜場(排水ポンプを据える集水用のくぼみ)での排水計画と排水先の手配。現場外へ放流する場合は必要に応じて沈砂槽等を設けます(標仕3.2.2)。予想外の出水は直ちに協議します
- 山留めの管理: 設置期間中は周辺地盤と山留めの状態を点検・計測し(標仕3.3.2)、矢板等の抜取りでは周辺地盤の沈下を防ぐ措置をとります(建基令第136条の3第6項)
- 隣接建物への影響: 建築物等に近接して掘削するときは、基礎や地盤の補強、急激な排水を避ける等の措置が求められます(同第3項)。家屋調査・沈下や傾斜の計測とあわせて計画します
- 重機と人の分離: 保護帽の着用(安衛則第366条)、後進して接近する運搬機械等への誘導者の配置(第365条)、旋回範囲の立入禁止という揚重と同じ規律で管理します
埋戻し: 「ただ埋める」が数年後の沈下になる
- 型枠等の撤去: 埋戻しに先立ち、型枠等を取り除きます(標仕3.2.3(1))
- 材料: 特記がなければA種(山砂の類)、B種(根切り土の中の良質土)、C種(他現場の建設発生土の中の良質土)、D種(再生コンクリート砂)から特記で指定します。「掘った土を戻すだけ」でよいかは設計図書によります
- まき出しと締固め: 一度に厚く埋めて表面だけ締めると、内部が緩いまま残ります。300mm程度ごとの締固めを、層ごとの厚さと転圧状況の写真で記録します
- 構造物・配管まわり: 重機が寄れず締固め不足になりやすい場所です。人力転圧と、管の上の重機走行制限をルール化します
埋戻しの品質は「層ごとの管理をしたか」で決まります。写真がなければ、やっていないのと同じ扱いを受けます。
残土の行き先まで管理して初めて完了
建設発生土の処理は特記によるとされています(標仕3.2.5)。
- 処分先の受け入れ条件と許可の確認。「運転手任せの処分」は不適正処分に巻き込まれるリスクがあります
- 搬出数量(車両台数と積載量)の記録。記録がなければ請求の検証ができません
- 場外へ出る車両のタイヤ洗浄と道路の汚損防止
- 建設発生土と産業廃棄物(がれき・汚泥等)の区別。詳細な区分・手続きは最新の法令・自治体ルールを確認してください
雨との付き合い方: 中止の判断と翌朝の点検
- 降雨中・直後の掘削は、法面の安定を確認してから。砂質土の法面は、雨後に見た目より緩んでいます
- 床付け直前の面は、雨予報が出たら掘り残して養生する
- 大雨の後と中震以上の地震の後は、指名した点検者が作業開始前に点検します(安衛則第358条)
- 水が溜まった掘削底は、排水してから地盤の状態を確認し、緩んだ面の扱いは協議へ
点検のトリガーは悪天候後の臨時点検と同じ発想です。中止で失う1日より、崩壊で失うものの方が常に大きい。
よくある質問
Q. 根切りの深さが何mから作業主任者や山留めが必要ですか。 A. 掘削面の高さが2m以上となる地山の掘削では地山の掘削作業主任者を選任します(施行令第6条第9号、安衛則第359条)。山留めは、深さ1.5m以上の根切りで、地盤が崩壊するおそれがないとき等を除き必要です(建基令第136条の3第4項)。
Q. 埋戻しは何cmごとに締め固めますか。 A. 標仕では300mm程度ごとです(3.2.3)。民間工事は特記仕様書で確認してください。
まとめ
根切り・埋戻しの管理は、掘る前の調査、浅い層の埋設物、床付け面の品質確認、深い掘削の水と山留めと隣地、層管理された埋戻し、と深さに沿って要点が変わります。2m(作業主任者)、1.5m(山留め)、300mm程度(埋戻しの層厚)の3つの数字と根拠を押さえ、見えなくなる前の確認と記録に力を注いでください。
出典・参考
- 労働安全衛生規則(e-Gov法令検索)第355条〜第366条: https://laws.e-gov.go.jp/law/347M50002000032
- 労働安全衛生法施行令(e-Gov法令検索)第6条第9号・第10号: https://laws.e-gov.go.jp/law/347CO0000000318
- 建築基準法施行令(e-Gov法令検索)第136条の3: https://laws.e-gov.go.jp/law/325CO0000000338
- 国土交通省大臣官房官庁営繕部「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」3章 土工事(3.2.1〜3.2.5、3.3.2): https://www.mlit.go.jp/gobuild/kenchiku_hyoushi.html
※ 2026年10月1日:冒頭で根切り・埋戻しの管理の基準を言い切る構成に見直し、「最新法令を確認」とだけ書いていた作業主任者・山留め・掘削面の勾配・埋戻しの層厚を条文と標準仕様書で確かめて記載し、早見表、よくある質問、出典を追加しました。
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