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共通仮設費・現場管理費・一般管理費の考え方|3つの財布を混ぜると利益が消える

共通仮設費・現場管理費・一般管理費の考え方|3つの財布を混ぜると利益が消える

「経費」とひとくくりにした瞬間、管理は終わる

見積書の最後に並ぶ共通仮設費・現場管理費・一般管理費。この3つを「まあ経費でしょ」とひとくくりに扱っている会社は、利益の漏れ場所を特定できません。3つは性質の違う財布であり、入っている中身も、金額の決まり方も、管理の方法も違うからです。

この記事では、3つの財布の中身を整理し、実行予算と見積での扱い方、そして経費が利益を食う典型パターンを解説します。なお、公共工事には積算基準上の経費率の体系がありますが、ここでは民間建築工事の実務を前提にします。

財布1: 共通仮設費「工事のための舞台装置代」

共通仮設費は、特定の工種ではなく工事全体のために使う仮設・準備の費用です。中身の代表は次のとおりです。

  • 仮囲い・ゲート・仮設事務所・詰所・仮設トイレ
  • 外部足場・養生(工種個別の足場は各工種に入れる場合もあり、区分の宣言が必要)
  • 揚重機(タワークレーン・リフト)の設置・リース・解体
  • 仮設電気・仮設水道の引き込みと使用料
  • 現場の安全設備(開口部養生・標識・消火器)、清掃・整理
  • 準備費(測量・調査)、跡片付けと産廃処理の一部

性質上、この財布は総合仮設計画とそのまま対応します。つまり共通仮設費は「率で見込む」ものではなく、仮設計画から数量で積み上げられる費用です。期間で発生するもの(リース・警備)は月額×期間、回数で発生するもの(据付・盛替え)は回数で。積み上げた根拠があれば、工期が延びたときの増額協議も、数字で話せます。

財布2: 現場管理費「現場を運営する人と事務の費用」

現場管理費は、その現場を運営するためにかかる費用です。最大の中身は人件費です。

  • 現場代理人・施工管理者の給与・法定福利費(工期分。掛け持ちなら按分)
  • 現場事務員の人件費
  • 現場の通信費・事務用品・光熱費・車両費
  • 労災保険等の保険料、各種申請の手数料
  • 品質管理の試験費、写真・書類の作成費
  • 近隣対策費(挨拶・家屋調査・お知らせの印刷)

この財布の特徴は、工期に比例して膨らむことです。担当者1人の月額コスト(給与だけでなく法定福利・車両・経費込みの「1人月いくら」)を会社として把握しておくと、工期6か月の工事に専任を置けばいくら、という計算が即座にできます。逆に、この単価を知らずに「監督は何人でも置ける」感覚で受注すると、利益は人件費に溶けます。

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財布3: 一般管理費「会社を維持する費用の分担金」

一般管理費は、本社の家賃、役員報酬、経理・総務の人件費、営業費用、広告費など、特定の現場に紐づかない会社全体の費用を、各工事に分担させたものです。

この財布だけは、積み上げではなく率で配賦するのが合理的です。実務の手順は、会社の年間の一般管理費総額を年間完成工事高で割り、自社の「一般管理費率」を知ること。この率を下回る経費見込みで受注すれば、その工事は会社の維持費を払えない工事です。値引き交渉の場面で「どこまで下げてよいか」の最終防衛ラインは、この率の理解から生まれます。粗利目標を語る前に、まず自社の率の把握が先です。

実行予算での扱い: 混ぜない・隠さない

3つの財布を実行予算に落とすときの原則は2つです。

混ぜない: 共通仮設費は数量で、現場管理費は人と期間で、一般管理費は率で。それぞれの決まり方で計上し、行を分けます。「経費一式10%」のような計上は、どの財布が膨らんだのか事後に検証できません。

隠さない: 各工種の単価に経費を薄く紛れ込ませる方式(いわゆる込み込み)は、見積の見た目は整いますが、原価管理を不可能にします。月次原価管理で経費の消化を追うためにも、経費は経費の行で管理します。

経費が利益を食う4つの典型パターン

完工後の赤字解剖で、経費起因の利益毀損には型があります。

  1. 工期延長のスライドを取り損ねる: 工期が2か月延びれば、リース・警備・管理者人件費は自動的に増えます。延長の原因が発注者側にあるなら、経費の増額は正当な協議対象です。「工事費は同じだから」と黙って飲むのは、財布2と1からの静かな出血です
  2. 掛け持ちの按分が甘い: 監督が3現場を掛け持ちしているのに、各予算に人件費が満額載っている、あるいはどこにも載っていない。どちらも実態が見えなくなります
  3. 仮設の盛り替え・延長が管理外: 足場の存置延長、リフトの延長、養生のやり直し。仮設は「計画どおり終わる」前提が崩れたときに膨らみます。変更のたびに予算側を更新する習慣(仮設計画は費用とセット)が防波堤です
  4. 小さな経費の無管理: 廃棄物処理、コピー・印刷、駐車場代。1件は小さくても工期分積もれば大きい。月次の経費実績を予算行と対比するだけで、この漏れは見えます

「経費率は何%が相場か」と聞かれたら

社内の若手や発注者から、経費率の相場を聞かれることがあります。この問いには、率で答えないことをおすすめします。理由は、この記事で見てきたとおり、3つの財布のうち率で決まるのは一般管理費だけだからです。

共通仮設費は、同じ請負金額でも敷地条件と工法で大きく変わります。狭小地でタワークレーンが要る現場と、平場で楽に回る現場。現場管理費は工期と体制で変わります。6か月専任1人の現場と、12か月2人の現場。これらを「工事費の何%」でまとめた瞬間、条件の違いが見えなくなり、厳しい条件の工事ほど損をする見積になります。

正しい答え方は「うちの過去物件では、この条件ならこう積んだ」という実績の提示です。率の相場観は検算のための参考値にとどめ、根拠は常に積み上げに置く。この姿勢が、経費で泣かない見積をつくります。

実績を溜めて「自社の経費データ」を持つ

経費管理の最終形は、完工物件の経費実績データベースです。物件ごとに、共通仮設費の内訳実績、現場管理費の月額実績、工期、特記条件を記録していく。10物件も溜まれば、「この規模・この工期なら現場管理費はいくら」という自社の相場が、外部の資料より正確な精度で手に入ります。

このデータは月次原価管理の副産物として自然に集まるものです。集計の一手間を惜しまなければ、見積のたびに経費をゼロから悩む状態から卒業できます。経費は感覚で載せるものではなく、実績から引くもの。それが経費管理の到達点です。

発注者にどう見せるか

民間工事では、見積の経費項目に発注者から「これは何の費用か」「削れないのか」と問われる場面があります。ここで曖昧な回答をすると、経費は「よく分からない上乗せ」として値引きの標的になります。

対策は、この記事の整理をそのまま説明に使うことです。共通仮設費は仮設計画の内容と数量で、現場管理費は配置する体制と期間で説明する。内訳を見せられる経費は、削る対象ではなく工事の品質と安全の裏づけとして扱われます。経費の透明性は、価格交渉における防御力なのです。

まとめ

共通仮設費は数量で積む、現場管理費は人と期間で積む、一般管理費は自社の率を知って配賦する。3つの財布を分けて管理すれば、経費は「なんとなく消えていくもの」から「説明も交渉もできる原価」に変わります。経費の解像度は、そのまま会社の利益の解像度です。

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