建設業務改善Navi
施工管理・技術約13分で読めます

ミルシート・品質証明書の管理|書類の「旅」を設計すれば集めるのは怖くない

ミルシート・品質証明書の管理|書類の「旅」を設計すれば集めるのは怖くない

「あの書類、届いてますか」を竣工前に言わないために

ミルシート(鋼材検査証明書)をはじめとする材料の品質証明書は、構造材料が規格どおりであることを示す唯一の書面です。ところが多くの現場で、この書類は「竣工前にまとめて催促するもの」になっています。納入から数か月後の催促は、商社・メーカーを巻き込む書類探しの旅となり、最悪「再発行できない」の回答が返ってきます。

対策の考え方はシンプルです。証明書類を、材料に付随して自然に流れてくる荷物として扱うこと。つまり、発注→納入→照合→保管という書類の旅を、最初に設計してしまうのです。この記事では、その旅程表の作り方を解説します。

出発点: 発注時に「書類も注文する」

書類の旅は、材料の発注書から始まります。旅程設計の第一原則は、証明書類を材料と同じ注文の一部にすることです。

  • 注文書・見積依頼に「品質証明書類の提出」を明記し、種類(ミルシート・試験成績書等)・提出時期(納入時)・宛先を指定します
  • 協力会社経由の材料(鉄筋業者が手配する鉄筋など)は、下請への注文条件として同じ要求を流します。「うちの発注先が出してくれない」の大半は、最初に頼んでいないだけです
  • 商社・メーカーには、対象工事名と照合キー(後述)を伝えておくと、書類の突き合わせが楽になります

品目別: 何を集めるかの地図

主要材料ごとに、集めるべき書類の代表例を挙げます(当該工事の特記仕様書の要求が正であり、必ず照合してください)。

  • 鉄筋: ミルシート(規格・化学成分・機械的性質)。圧接・機械式継手があれば、その技量資格・試験記録も一族の書類です
  • 鉄骨: 鋼材のミルシートに加え、製品検査記録・溶接検査記録、高力ボルトの検査証明。ファブから一式で受け取る段取りにします
  • 生コン: 配合計画書・納入書・受入検査と圧縮強度の成績。これは現場発生の書類なので、日々の整理が本体です
  • その他の性能材料: 防水材・シーリング・耐火被覆・ALC・杭・金物類の試験成績書・出荷証明。性能を売りにする材料には、性能の証明が付くのが原則です

物件の着工時に、この地図を「必要書類一覧表」(品目・書類名・提出者・時期・受領状況)として1枚作れば、旅程表の完成です。

中間地点: 納入時の「受領と照合」を儀式にする

書類の旅で最も事故が起きるのが、納入時です。現物は現場へ、書類はどこかへ、と別れてしまう。

  • 納入時の受領ルールを決めます。書類の受け取り担当(現場事務・施工管理者)と、受け取ったら一覧表にチェックを入れる運用
  • 照合のキーを確認する: ミルシートと現物を結ぶのは、鋼材ならチャージ番号(溶鋼番号)やロット、タグの表示です。書類が「この現場に納めた材料のもの」であることを、数量・規格・番号の突き合わせで確認します。束のタグ写真を納入時の記録として撮っておくと、後日の照合が確実になります
  • 規格違い・書類不足に気づくのは、この瞬間が最初で最後のチャンスです。使ってしまった後の「実は規格が違った」は、対処の桁が変わります
ツナギー

案件の状況、担当者に聞かないと分からなくなっていませんか?

案件情報・進捗・書類をクラウドで一元管理。ツナギー の活用例をまとめました。

終着点: 保管は「探せる束」で

集めた書類の保管は、竣工図書の積み立て方式に合流させます。

  • 品目別のフォルダ(紙・電子)に、一覧表を先頭に置いて時系列で綴る
  • 電子化する場合は命名規則(品目-納入日-内容)を決め、スキャンの束にしない
  • 月次で一覧表の空欄(未受領)を点検し、翌月に持ち越さない。月次の事務ルーチンに15分組み込めば、竣工前の催促の旅は消滅します

そもそも何のための書類か: 3つの使い道

回収の手間の意味を見失わないよう、この書類たちの使い道を確認しておきます。

  1. 施工中の確認: 設計の指定規格(材質・強度)どおりの材料が入っているかの、その場の確認
  2. 対外的な証明: 監理者検査・各種検査での提示。整った材料書類は、現場の管理水準の名刺代わりになります
  3. 将来への引き継ぎ: 数十年後の改修・調査・売買の際、「この建物に何が使われているか」を語れる唯一の記録。構造検査の記録とともに、建物の信用の一部です

材料の偽装や不適合が社会問題になるたび、問われるのは「証明書類を確認していたか」です。書類の旅の設計は、地味ですが、会社の誠実さの証明システムなのです。

担当を決める: 「みんなの仕事」は誰の仕事でもない

書類の旅が破綻する組織的な原因は、担当の不在です。施工管理者は現場に出ており、納品の瞬間に事務所にいるとは限りません。実務的な分担の型を示します。

  • 受領の一次窓口は現場事務(または決めた代理): 納品書類を受け取り、一覧表にチェックし、所定のトレイ・フォルダに入れるまでを担う
  • 照合は施工管理者: 規格・数量・番号の突き合わせという技術判断は、週次でまとめて行う(毎日でなくてよい)
  • 月次の空欄点検は台帳管理者: 月次ルーチンの一部として、未受領の催促を出す

「受ける・照合する・追いかける」を分けて名前を付ける。これだけで、書類は「気づいた人が拾うもの」から「流れる仕組み」に変わります。属人化対策の情報資産の管理そのものです。

電子化の潮流: 書類の旅は短くなっていく

鋼材のミルシートをはじめ、品質証明書類の電子発行・電子交付は着実に広がっています。電子化は、紛失リスクの低下、照合キーでの検索、竣工図書の電子化への直結という利点があり、受け取れるものは電子で受け取る方針をおすすめします。その際の注意は2つ。改ざん防止の観点から発行元の正規データ(PDFの改変不可形式等)で受領すること、そして自社の保管体系(命名・フォルダ)に取り込むルールを決めることです。電子化しても「メールの添付のまま行方不明」では、紙の山と同じことです。建材のトレーサビリティへの要求は今後も強まる方向にあり、書類管理の仕組みを持つ会社ほど、この変化は追い風になります。

つまずきやすいポイント

  • 「一式まとめて後日」を受け入れてしまう: 納入の都度が原則。後日は来ません
  • 書類の要求水準が人によって違う: 担当者の経験差で、集める書類がばらつく。着工時の一覧表が標準を作ります
  • 照合せずに綴じる: 受領のチェックだけで中身を見ない運用は、「書類はあるが別ロットのもの」を見逃します。最低限、規格と数量の突き合わせを

催促のコツにも触れておきます。未受領の催促は「〇月〇日納入分の△△のミルシート」と、納入日・品目・数量で特定して依頼すること。「書類一式ください」という曖昧な催促は、相手の探し物を増やし、回答を遅らせるだけです。一覧表が整っていれば、特定した催促は自然にできます。

まとめ

ミルシート・品質証明書の管理は、発注時に書類も注文し、品目別の一覧表で旅程を描き、納入時に受領と照合を儀式化し、月次で空欄を潰しながら竣工図書へ合流させる、という流通設計の仕事です。竣工前の書類探しの旅は、着工時の1枚の一覧表で予防できます。書類は追いかけるものではなく、流れてくるように設計するもの。それがこの地味な業務の攻略法です。次の物件の発注書から、書類の一文を足すところから始めてください。

お悩み別 おすすめサービス

いまの課題に近いものはどれですか?

選んだお悩みに最適なサービスのご案内ページへ移動します。

無料デモで確認する(オンライン30分)

2営業日以内に担当者からご連絡します。無理な営業はいたしません。

あわせて読みたい関連記事