竣工図書とは|建築工事の一覧と「誰が読むか」から逆引きするまとめ方
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編集・発行:KMC株式会社
竣工図書とは、建築工事が完成したときに施工者が発注者(施主)へ引き渡す、竣工図(完成時の状態を表した図面)・検査や試験の記録・保証書・機器の取扱説明書・官公署への届出書類などの図書一式のことです。 法令で中身が一律に決まっているわけではなく、何をどの形で出すかは請負契約と特記仕様書で決まります。公共建築では国土交通省の「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)」(以下「標仕」)が、特記がなければ「完成図」と「保全に関する資料」を提出すると定めています(1.7)。
この記事では、まず竣工図書の一覧を早見表で示し、そのうえで「誰が、いつ、何を探しに来るか」から逆引きして構成を組む方法を解説します。
【早見表】竣工図書の一覧と出どころ
| 図書 | 主な中身 | 根拠・参考 | 渡す/残す |
|---|---|---|---|
| 竣工図(完成図) | 完成時の状態を表した図面。標仕の特記がない場合は配置図及び案内図、各階平面図、各立面図、断面図(2面以上)、仕上表 | 標仕1.7.2・表1.7.1、契約・特記仕様書 | 渡す。元請は写しを10年保存 |
| 建築物等の利用に関する説明書 | 建物の基本的な使用方法や注意点、災害時など非常時の使用方法をまとめた説明書。使用や保全の基礎資料になる | 標仕1.7.3(保全に関する資料) | 渡す |
| 機器取扱い説明書・機器性能試験成績書 | 設備機器の取扱いと試験結果 | 標仕1.7.3 | 渡す |
| 官公署届出書類 | 確認済証・検査済証の写し、各種届出の控え。確認済証と検査済証は建築主に交付される | 標仕1.7.3、建築基準法第6条・第7条 | 渡す(原本の所在を明記) |
| 総合試運転報告書 | 防火設備等を関連機器と連動させた確認の結果など | 標仕1.5.7・1.7.3 | 渡す |
| 検査・試験の記録、工事写真 | 配筋検査、コンクリート試験成績、施工の記録 | 標仕1.2.4、契約・特記仕様書 | 契約に応じて渡す。元データは残す |
| 保証書と保証一覧表 | 防水・外壁・建具・設備機器などの保証 | 契約・各メーカーの保証条件 | 渡す |
| 発注者との打合せ記録、施工体系図 | 工事内容の打合せ記録など | 建設業法第40条の3、同法施行規則第26条第5項 | 残す(10年保存) |
表の「元請は10年保存」は、建設業法第40条の3と同法施行規則第26条第5項・第28条第2項によるものです。発注者から直接請け負った建設業者は、施工上の必要に応じて作成し、または発注者から受け取った完成図(建設工事の目的物の完成時の状況を表した図)、発注者との打合せ記録などを、営業所で引渡しから10年間保存しなければなりません(施工体系図は施工体制台帳の作成が必要な工事の場合)。竣工図書は「渡して終わり」ではなく、自社にも法定の保存義務が残るということです。
竣工図書は「工事の卒業アルバム」ではない
竣工図書と聞くと、工事の記録を立派に製本した「卒業アルバム」を想像しがちです。しかし本来の役割は逆で、竣工図書は過去の記念品ではなく、これから数十年の建物運用の取扱説明書です。エアコンが壊れた日、テナントが壁に穴を開けたい日、外壁調査の日。その都度開かれ、答えを返せる図書だけが、価値のある竣工図書です。
だから構成は「何を綴じるか」ではなく、「誰が、いつ、何を探しに来るか」から逆引きして組みます。読み手は大きく3者。施主(所有者)、建物の管理者・使用者、そして自社のアフター部門です。
読み手1: 施主(所有者)「資産の証明書」として
所有者が探しに来るのは、増改築・売却・融資・保険、そして万一の紛争のときです。
- 確認済証・検査済証など法定手続きの書類(建築主に交付される最重要書類。竣工図書には写しと原本の所在を入れる)
- 契約関係(請負契約書・増減精算の記録)と引渡し関係の書類
- 保証書類一式(防水・シーリング・外壁タイル・建具・設備機器。保証の起算日・条件・窓口を一覧表に)
- 主要な検査記録(構造関係の配筋検査・コンクリート試験成績・鉄骨検査の要約)
ポイントは保証一覧表です。「何が・いつまで・どの条件で・どこに連絡」を1枚に集約し、施主が数年後に単独で使える形にしておくことが、無用な問い合わせの削減にもなります。
読み手2: 建物管理者・使用者「日常運用の道具」として
ビルメンテナンス会社、施設担当者、テナント。日常の維持管理でもっとも頻繁に図書を開くのはこの層です。
- 竣工図(意匠・構造・設備)。とくに設備系統図と、隠蔽部の経路(配管・配線・下地補強の位置)
- 機器リストと取扱説明書、メーカー連絡先、消耗品情報
- 仕上げ材のリスト(補修用の予備品と品番。クロス・床材・塗料の色番は改修時に必ず探されます)
- 点検口の位置図と、維持管理上の注意(ドレン清掃・可動部の注意)
この層への最大の贈り物は、「竣工図が現況と一致していること」です。標仕も完成図を「工事目的物の完成時の状態を表現」するものとしています。変更管理(増減の記録)と竣工図の反映を連動させておくことが、竣工間際の作図残業を防ぐ道でもあります。
読み手3: 自社のアフター部門「未来の自分たち」のために
見落とされがちな第三の読者が、数年後の自社です。定期点検、補修依頼、リニューアルの見積。過去の記録がすぐ出てくる会社は、それだけで次の仕事を取りに行けます。
- 完成図と発注者との打合せ記録(建設業法で10年保存が必要な図書)
- 工事写真の全量(提出用に編集する前の、分類された元データ)
- 検査・是正の記録一式と、施工中の変更経緯
- 実行予算と最終原価の総括(完工後の解剖の材料)、主要協力会社と担当職長の記録
- 施工中に苦労した納まり・特殊な工法のメモ(次の担当者への申し送り)
「渡す図書」と「残す図書」を分けて設計することで、竣工図書は会社のナレッジ資産(属人化対策)の一部になります。
電子化の実務: 「PDFにした」だけでは探せない
建設業法施行規則第26条第8項は、保存すべき図書を電子ファイルで記録し、必要に応じ営業所で紙面や画面に明確に表示できるなら、その記録で代えられるとしています。電子化そのものは認められていますが、探せなければ意味がありません。
- 検索できる名前を付ける: 「scan001.pdf」の山は、紙より探しにくい電子ごみです。「棟-階-図書種別-内容」の命名規則を最初に決めます
- 目次データを作る: フォルダ構成と1枚の目次(何がどこにあるか)が、電子図書の背表紙になります
- 原本性の整理: 検査済証など原本価値のある書類は、原本の所在(施主渡しか自社保管か)を目次に明記します
公共工事では電子納品の要領が定められていることが多いため、特記仕様書で形式を確認します。保管方法(クラウド・社内サーバー)と管理責任者も決めておきます。記録の出口設計の一環です。
竣工間際に慌てないための「積み立て」段取り
竣工図書づくりが竣工前の徹夜仕事になる原因は、材料集めを最後に一括でやるからです。
- 着工時に、契約・特記仕様書で求められる提出図書を洗い出して目次を作り、空フォルダを用意する
- 検査記録・試験成績・承認図は、発生の都度、目次の場所へ格納する(月次の書類整理とセットの習慣に)
- 機器の取説・保証書は、納入時に回収する
- 竣工前に不足リストを作り、回収に走る(竣工の逆算カレンダーの1項目として)
完成写真は「記録」と別枠で撮る
工事中の記録写真とは別に、竣工時の完成写真(外観・主要室・特徴的な部位)を、片付いた状態で撮っておく価値があります。施主への納品、自社の実績紹介、採用広報に使えます。竣工直後の「一番きれいな瞬間」は二度と撮れないので、竣工前の逆算カレンダーに撮影日を入れておきます。
引渡し説明会は「図書の使い方講習」にする
段ボールごと「こちらが竣工図書です」と渡すのではなく、引渡し説明の場で図書の地図を案内します。保証で困ったらこの一覧表、設備のことはこの巻、図面はこの構成。付箋やインデックスで「最初に開くページ」を示し、保管場所を施主側で決めてもらうことも促します。「誰も場所を知らない竣工図書」は、存在しないのと同じだからです。
よくある不備ワースト3
- 竣工図が「設計図の再発行」になっている: 施工中の変更が反映されず、現況と一致しない図面。読み手2の信頼を最も損なう不備です
- 保証書の起算日・条件がバラバラのまま: 束ねただけで一覧化されておらず、いざという時に「保証内か」が誰にも分からない
- 提出後、自社に何も残っていない: 写しも写真の元データも残さず、アフター対応のたびに施主から借りる。完成図や打合せ記録なら、法定の保存義務を果たしていないことにもなります
よくある質問
Q. 竣工図書と竣工図の違いは何ですか。 A. 竣工図は完成時の状態を表した図面で、竣工図書はその竣工図を含む引渡し図書一式です。公共建築の標仕では、完成図と保全に関する資料(建築物等の利用に関する説明書、機器取扱い説明書、機器性能試験成績書、官公署届出書類、総合試運転報告書)が提出図書です。
Q. 竣工図書は施工者も保存する必要がありますか。 A. 発注者から直接請け負った建設業者は、完成図や発注者との打合せ記録などを、引渡しから10年間、営業所で保存する義務があります(建設業法第40条の3、同法施行規則第26条第5項・第28条第2項)。
まとめ
竣工図書は、契約と特記仕様書で決まる引渡し図書一式であり、施主・管理者・自社アフターという3人の読者から逆引きして構成すると使える図書になります。保証一覧と現況一致の竣工図、命名規則と目次で探せる電子化、工事中の積み立て、そして元請としての10年保存。引渡しの日に手渡すその箱は、建物と発注者と自社をつなぐ、いちばん長持ちする成果物です。
出典・参考
- 国土交通省大臣官房官庁営繕部「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」1章 各章共通事項(1.2.4 工事の記録等、1.5.7 総合試運転調整、1.7 完成図等): https://www.mlit.go.jp/gobuild/kenchiku_hyoushi.html
- 国土交通省「建築物等の利用に関する説明書」作成の手引き: https://www.mlit.go.jp/gobuild/kijun_kentikubuturiyou_tebiki.html
- 国土交通省 報道発表「建築物等の利用に関する説明書の作成例について」: https://www.mlit.go.jp/report/press/eizen03_hh_000074.html
- 建設業法(e-Gov法令検索)第40条の3: https://laws.e-gov.go.jp/law/324AC0000000100
- 建設業法施行規則(e-Gov法令検索)第26条・第28条: https://laws.e-gov.go.jp/law/324M50004000014
- 建築基準法(e-Gov法令検索)第6条・第7条: https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000201
※ 2026年10月1日:冒頭で竣工図書の意味を言い切る構成に見直し、公共建築工事標準仕様書の完成時の提出図書と建設業法の完成図等の10年保存を追加し、竣工図書の一覧表・よくある質問・出典を追加しました。
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