コンクリート打設計画書の書き方|建築躯体の記入項目と時間計算
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編集・発行:KMC株式会社
コンクリート打設計画書とは、建築躯体の打設日について、打設数量と所要時間、打込み区画と打ち順、生コン車の出荷間隔、人員配置、天候の判断基準、打設後の養生までを1枚にまとめた計画書のことです。書き方の基本は、数量と時間を先に確定し、次に「どこから・どの順に・誰が」打つかを決め、最後に養生の担当と期間まで書き切ることです。
打ち順や打継ぎの位置、練混ぜから打込み終了までの時間などは、国土交通省の「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)」(以下「標仕」)や特記仕様書に決まりがあります。この記事では、計画書の項目を順に埋めていけば計画が完成する形で解説し、記入項目の早見表と時間の計算例を付けました。
打設日は「現場の総力戦」。だから計画書で戦う
打設日は、生コン車が数十台、ポンプ車、土工、型枠大工、鉄筋工、左官、試験員が同時に動く日です。口頭の指示だけで回すのは無理があります。そこで役立つのがA3一枚の打設計画書です。建築の施工計画書(工事全体の施工方法をまとめた書類)のコンクリート工事の部分を、打設日単位に落とし込んだものと考えるとわかりやすくなります。
【早見表】打設計画書の記入項目
| 項目 | 書く内容 | 確認する規定・資料 |
|---|---|---|
| 1. 数量と時間 | 部位別数量、打設速度、所要時間、台数、開始・終了予定 | 数量拾い、工場の出荷能力 |
| 2. 区画と打ち順 | 打込み区画図、順路の矢印、打継ぎ位置、打継ぎ面の処理 | 標仕6.6.3・6.6.4、特記 |
| 3. 車両計画 | 出荷間隔、場内動線、洗い場、運搬時間と時間の限度 | 標仕6.6.2、JIS A 5308 |
| 4. 人員配置 | 筒先、振動機、型枠・支保工監視、鉄筋直し、均し、受入検査の担当者名 | 標仕6.6.5 |
| 5. 天候・気温 | 中止・決行の判断基準と時刻、雨・暑中・寒中の備え | 標仕6.6.3・6.11・6.12、特記 |
| 6. 打設後 | 仕上げ、立入制限、養生の方法・期間・担当、翌朝点検 | 建築基準法施行令第75条、標仕6.7 |
項目1: 打設数量と打設時間の計算
- 打設数量: 部位別(柱・壁・梁・スラブ)に拾って合計します。拾い方は躯体の数量拾いと同じ要領です
- 打設速度: ポンプの能力ではなく、締固めと均しが追いつく速度で見積もります。標仕も、打込み速度は良好な締固めができる範囲で定めるとしています(6.6.3)
- 所要時間と台数: 数量を速度で割れば所要時間、工場に確認した1台あたりの積載量で割れば台数が出ます
「1日で終わらない」と分かったら、区画を分けるか開始時刻・体制を変えるかを計画段階で決着させます。日没との競争は、打継ぎ不良・締固め不足の温床です。
項目2: 打込み区画と打ち順、打継ぎの位置
打設区画図に、打ち始めから打ち終わりまでの順路を矢印で描きます。
- 遠い場所から手前へ(配管の盛り替えを減らす)
- 柱・壁を先に打ち、沈みが落ち着いてから梁、梁の沈みが落ち着いてからスラブへ(標仕6.6.3)
- パラペットの立上り、ひさし、バルコニー等は、支える構造体と同じ打込み区画にする。1回で打つ区画内は連続して打ち込み、同一区画に2つ以上の生コン工場のコンクリートを打ち込まない(6.6.3)
- 打重ねの時間間隔の限度は、先に打ったコンクリートの再振動可能時間以内(6.6.3)。超えるとコールドジョイントになります
- 打継ぎの位置は特記による。特記がなければ、梁・スラブはスパンの中央または端から1/4の付近、柱・壁はスラブ・壁梁・基礎の上端(6.6.4)。監理者と事前合意する
- 前回打設分の打継ぎ面は、レイタンス(表面の脆弱な層)とぜい弱部を取り除き、打込み前に散水して湿潤にする(たまり水は残さない)
区画図は朝礼で配る前提で作ります。打継ぎ部の欠陥は打継ぎ不良とひび割れの対策にまとめています。
項目3: 車両計画: 生コン車の到着間隔
工場と出荷間隔を決めます。到着間隔が開けば打重ね時間を超えてコールドジョイント、詰まれば待機中に時間の限度を超えるリスクです。朝の渋滞や昼休憩時の出荷調整も工場へ伝え、場内の車両動線(入る・卸す・洗う・出る)と洗い場の排水処理もここで決めます。
時間の限度は、標仕では練混ぜから打込み終了までで、外気温25℃以下なら120分以内、25℃を超える場合は90分以内です(6.6.2)。工場から荷卸しまでの運搬時間にはJIS A 5308の定めもあるため、あわせて確認します。
【計算例】現場で使える時間を逆算する
仮の条件として、外気温が25℃を超える日に、練り混ぜてから現場に着くまで40分かかる場合を考えます。
- 時間の限度: 90分(標仕6.6.2、外気温25℃超)
- 現場で使える時間: 90分-40分=50分
- この50分に、場内での待機、荷卸し、圧送、打込み終了までが収まる必要がある
- 1台の荷卸しから打込み終了までにかかる時間を50分から引いた分が、場内で待たせてよい時間の上限。超えそうなら出荷間隔を広げるよう工場へ連絡する
運搬時間は工場と経路で変わるため、渋滞する時間帯の値も含めて工場に確認し、計画書に書き込みます。
項目4: 人員配置図: 役割に名前を入れる
- 筒先(ホースの先端)の操作と締固め。標仕では、配管1系統につき棒形振動機を2台以上配置し、挿入間隔は60cm以下です(6.6.5)
- 型枠・支保工の監視(型枠の施工管理で述べた、はらみ・漏れ・沈下の監視員)
- 鉄筋の乱れ直し(打設中に踏まれた上端筋の修正役)
- レベル管理と均し・仕上げ。凝結が終わる前のタンピング(表面のたたき締め)でひび割れを防ぐ(6.6.6)
- 生コン車の誘導と伝票確認、試験の立会い(受入検査参照)
「誰かがやるだろう」の役割は、当日誰もやりません。名前入りの配置図を朝礼で読み合わせます。
項目5: 天候と気温への備え
- 降雨予報時の中止・決行の判断基準と判断時刻、工場への連絡期限。標仕では、品質に悪影響を及ぼすおそれのある降雨・降雪が予想される場合や、打込み中のコンクリート温度が2℃を下回るおそれのある場合は適切な養生を行い、できなければ打ち込まないとしています(6.6.3)
- 暑い時期(標仕では日平均気温の日別平滑値が25℃を超える期間)は、荷卸し時のコンクリート温度35℃以下、練混ぜから打込み終了まで90分以内、輸送管を濡れたシートで覆う、せき板と打継ぎ面への十分な散水(6.12)
- 寒い時期は、保温養生・採暖の準備と強度発現の遅れの考慮。寒中コンクリートの適用期間は特記によります(6.11)
具体的な管理基準は特記仕様書によりますが、「用意すべき道具と体制」は計画書に書いておかないと当日揃いません。
項目6: 打設後: 養生までが打設
- 仕上げ(金鏝押えの回数・時期)と立入制限。標仕では、打込み後少なくとも1日間はその上で歩行・作業をしないとしています(6.7.3)
- 養生の方法と期間。建築基準法施行令第75条は、打込み中と打込み後5日間はコンクリートの温度が2度を下らないようにし、乾燥・震動等で凝結・硬化が妨げられないよう養生することを求めています。湿潤養生の期間は、標仕では普通ポルトランドセメントで5日以上、早強ポルトランドセメントで3日以上、高炉セメントB種などで7日以上です(表6.7.1)
- 供試体の現場養生の設置場所(直射日光の当たらない屋外)と、打設翌朝の点検(表面のひび割れ・型枠・支保工)
養生の担当者と開始時刻まで計画に含めて、初めて打設計画は完成です。
打設日の定番トラブルと予防線
- ポンプの閉塞: 配管ルートは最短・最少曲がりで計画し、予備配管・洗浄の段取りをポンプ業者と確認します。標仕では閉塞した部分のコンクリートは廃棄し、先送りモルタルは原則として型枠内に打ち込みません(6.6.1)
- 生コンの「足りない・余る」: 残り何m3の時点で最終台数を確定するかと連絡係を決め、余った生コンの処分方法も事前に決めます
- 夕方の失速: 終盤にベテランを残す配置、照明の準備、日没を超えそうなときの応援判断を昼の時点で行います
- 上下同時作業: 打設階の直下での型枠解体や墨出しは、止めるか区画するかを週間工程で先に調整します
- 現場での加水: 打ちにくいからと水を足すのは禁止です(標仕6.6.1)
小規模打設(雑コン、設備基礎、階段の後打ち)ほど計画も試験も省略されがちです。伝票確認と写真、担当者1名の指名、養生の実施という簡易版のルールを決め、省略するのは書式であって管理ではない、という線を引いておきます。
計画書を「使う」習慣と原価の視点
前日に各職長と計画書を読み合わせ、打設後は実際の数量・時間・台数・トラブルを余白に書き込みます。次の計画の精度はこの実績メモから上がります。
打設計画は原価計画でもあります。ポンプ車の費用は打設の回数ごとにかかるため、区画の分け方はそのまま費用に響き、だらだらと長い打設は労務費を膨らませます。実行予算のコンクリート・仮設関連の行と打設の回数・体制を突き合わせ、品質・工程・費用のバランスで区画を決めます(月次原価管理のやり方)。
よくある質問
Q. 柱・壁・梁・スラブはどの順に打てばよいですか。 A. 標仕では、壁・柱の沈みが落ち着いてから梁に打ち込み、梁の沈みが落ち着いてからスラブに打ち込むとしています(6.6.3)。
Q. 生コンは練り混ぜてから何分以内に打ち終える必要がありますか。 A. 標仕では、外気温25℃以下で120分以内、25℃を超える場合は90分以内です(6.6.2)。民間工事は特記仕様書で指定された値を確認してください。
まとめ
コンクリート打設計画書は、数量と時間、打込み区画と打ち順、車両間隔と時間の限度、名前入りの人員配置、天候対応、打設後の養生までを1枚に落とし込む書類です。項目を順に埋め、前日に読み合わせる。この習慣が、打設日を「祈る日」から「実行する日」に変えます。
出典・参考
- 建築基準法施行令(e-Gov法令検索)第75条(コンクリートの養生): https://laws.e-gov.go.jp/law/325CO0000000338
- 国土交通省大臣官房官庁営繕部「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」6章 コンクリート工事(6.6 工事現場内運搬・打込み・締固め、6.7 養生、6.11 寒中コンクリート、6.12 暑中コンクリート): https://www.mlit.go.jp/gobuild/kenchiku_hyoushi.html
- JIS A 5308(レディーミクストコンクリート): 日本産業標準調査会(JISC)で閲覧できます https://www.jisc.go.jp/
- 日本建築学会「JASS 5 鉄筋コンクリート工事」(学会の有料資料。民間工事で特記仕様書に指定されている場合は該当版を確認)
※ 2026年9月30日:冒頭で打設計画書の意味と書き方を言い切る構成に見直し、打ち順・打継ぎ位置・時間の限度・養生を公共建築工事標準仕様書と建築基準法施行令に合わせ、記入項目の早見表・時間の計算例・よくある質問・出典を追加しました。
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