コンクリート打設計画の立て方|打設計画書の項目を順に埋めれば段取りは完成する
打設日は「現場の総力戦」。だから計画書で戦う
コンクリート打設日は、建築現場で最も多くの人と機械が同時に動く日です。生コン車が数十台、ポンプ車、土工、型枠大工、鉄筋工、左官、試験員。この総力戦を口頭の指示だけで回すのは無理があります。
そこで役立つのが、A3一枚の打設計画書です。この記事は、その項目をひとつずつ埋めていけば計画が完成する構成にしました。次の打設からそのまま使ってください。
項目1: 打設数量と打設時間の計算
まず当日の規模を数字で確定します。
- 打設数量: 部位別(柱・壁・梁・スラブ)の数量を拾い、合計します。数量の拾い方は躯体の数量拾いと同じ要領です
- 打設速度: ポンプの能力ではなく、締固めと均しが追いつく現実的な速度で見積もります
- 所要時間と台数: 数量を速度で割れば所要時間、車両1台の積載量で割れば台数が出ます
この計算で「1日で終わらない」ことが判明したら、打設区画を分けるか、開始時刻・体制を変えるか、計画段階で決着させます。当日の日没との競争は、品質事故(打継ぎ不良・締固め不足)の温床です。
項目2: 打ち順と打継ぎの位置
打設区画図に、打ち始めから打ち終わりまでの順路を矢印で描きます。決める観点は次のとおりです。
- 遠い場所から手前へ(配管の盛り替えを減らす)
- 柱・壁を先行して沈降を待ち、梁・スラブへ進む段取り(部位間の打ち込み時間差の管理)
- やむを得ず設ける打継ぎの位置は、構造的に望ましい位置(設計図書・標準仕様の規定)に計画し、監理者と事前合意する
- 前回打設分との打継ぎ面の処理(レイタンス除去・湿潤)を前日までに済ませる
打ち順が全員に共有されていないと、ポンプの配管替えのたびに現場が止まります。区画図は朝礼で配る前提で作ります。
項目3: 車両計画: 生コン車の到着間隔
生コン工場と打ち合わせて、出荷間隔を決めます。ポイントは「途切れさせない、渋滞させない」の両立です。到着間隔が開けば打継ぎ不良(コールドジョイント)のリスク、詰まれば待機時間超過のリスク。道路事情(朝の渋滞・学校の登下校時間)も加味し、昼休憩時の出荷調整も忘れずに工場へ伝えます。場内の車両動線(入る・卸す・洗う・出る)と洗い場の排水処理も、このタイミングで決めます。
項目4: 人員配置図: 役割に名前を入れる
打設当日の役割を、人数ではなく名前で決めます。
- 筒先(ホースの先端)の操作と締固め(バイブレーター)の担当
- 型枠・支保工の監視(型枠の施工管理で述べた、はらみ・漏れ・沈下の監視員)
- 鉄筋の乱れ直し(打設中に踏まれた上端筋の修正役)
- レベル管理と均し・仕上げ(左官)
- 生コン車の誘導と伝票確認、試験の立会い(受入検査参照)
「誰かがやるだろう」の役割は、当日誰もやりません。名前の入った配置図を作り、朝礼で読み合わせるだけで、打設日の混乱は半減します。
項目5: 天候と気温への備え
打設日は天気予報とにらみ合いです。判断のルールを計画に書いておきます。
- 降雨の予報がある場合の中止・決行の判断基準と判断時刻(前日夕方・当日早朝)、中止時の生コン工場への連絡期限
- 打設中の急な降雨に備えた養生シートの準備
- 暑い時期は、練上がり温度と運搬時間の管理、直射日光下の急乾燥への対策(散水・養生開始の前倒し)
- 寒い時期は、初期凍害への備え(保温養生・採暖の準備)と強度発現の遅れの考慮
暑中・寒中の具体的な管理基準は特記仕様書とJASS等の規定によりますが、「用意すべき道具と体制」は計画書に書いておかないと当日揃いません。
項目6: 打設後: 養生までが打設
計画書の最後の欄は、打ち終わった後の段取りです。
- 仕上げ(金鏝押えの回数・時期)と、スラブ上の立入制限の開始
- 養生の方法と期間(湿潤養生・シート養生)。翌日の墨出しとの兼ね合いも決めておく
- 供試体の現場養生の設置場所
- 打設翌朝の点検(表面のひび割れ・型枠の異常・支保工の状態)
打設の失敗の多くは、打ち込みそのものより「打ち終わった後の放置」で起きます。養生の担当者と開始時刻まで計画に含めて、初めて打設計画は完成です。
打設日の定番トラブルと予防線
計画書の各項目に加えて、当日に起きがちなトラブルの予防線を張っておきます。
- ポンプの閉塞: 配管の曲がりが多いルート、待ち時間の長い運用で起きやすくなります。配管ルートは最短・最少曲がりで計画し、閉塞時の対応(予備配管・洗浄の段取り)をポンプ業者と確認しておきます
- 生コンの「足りない・余る」: 最終盤の数量調整は、残り数量を実測して工場へ連絡するタイミングが命です。連絡係と連絡基準(残り何立方メートル時点で最終台数を確定するか)を決めておきます。余った生コンの処分方法も事前に決めます
- 夕方の失速: 疲労で締固めと均しの質が落ちるのが打設終盤です。終盤にベテランを残す配置、照明の準備、終了予定が日没を超えそうなときの応援判断を、昼の時点で行います
- 上下同時作業の発生: 打設階の直下で型枠解体や墨出しが並行すると、漏れたノロや落下物の危険があります。打設日は直下階の作業を止めるか区画するかを、週間工程で先に調整します
トラブルはゼロにできませんが、「起きたときに誰が何をするか」が決まっていれば、事故ではなく想定内の対応になります。
小さい打設ほど危ない、という逆説
雑コン、設備基礎、階段の後打ち。数立方メートルの小規模打設は、計画書も試験も省略されがちです。しかし品質事故の発生率で見ると、小規模打設は決して安全ではありません。人員は最小、監視はなく、生コンは1台だけ、養生は忘れられる。「小さいから大丈夫」ではなく「小さいから誰も見ていない」のです。
小規模打設には簡易版のルール(伝票確認と写真、担当者1名の指名、養生の実施)を決めておき、省略するのは書式であって管理そのものではない、という線を引いておくことをおすすめします。
計画書を「使う」ための2つの習慣
最後に、計画書を紙のまま終わらせないための運用を2つ挙げます。
- 前日ミーティングで読み合わせる: ポンプ・土工・型枠・鉄筋の各職長と、計画書を見ながら15分の確認を行います。「配管ルートがその位置では型枠検査の通路と重なる」といった指摘は、この場でしか出ません
- 打設後に実績を書き込む: 実際の数量・時間・台数・トラブルを計画書の余白に記録します。次の打設計画の精度は、この実績メモから上がっていきます
打設計画は原価計画でもある
見落とされがちですが、打設計画はコストの計画でもあります。ポンプ車の基本料金は打設回数に比例するため、打設区画の分け方(何回で打つか)はそのまま費用に響きます。土工・左官の人員も同様で、だらだらと長い打設は労務費を膨らませます。逆に、無理に1回へまとめて日没と競争すれば、品質リスクと残業代の両方を抱えます。
実行予算のコンクリート・仮設関連の行と、打設計画の回数・体制を突き合わせて、品質・工程・費用のバランスで区画を決める。この視点を持つと、打設計画は「段取り表」から「原価をコントロールする道具」に変わります。予算との突き合わせ方は月次原価管理のやり方を参照してください。
まとめ
コンクリート打設計画は、数量と時間の計算、打ち順、車両間隔、名前入りの人員配置、天候対応、打設後の養生までを1枚に落とし込む作業です。計画書の項目を順に埋め、前日に読み合わせる。このシンプルな習慣が、打設日を「祈る日」から「実行する日」に変えます。
いまの課題に近いものはどれですか?
選んだお悩みに最適なサービスのご案内ページへ移動します。
2営業日以内に担当者からご連絡します。無理な営業はいたしません。





