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建築施工管理の残業を減らす|「時間の家計簿」をつけてから削る10の工夫

建築施工管理の残業を減らす|「時間の家計簿」をつけてから削る10の工夫

「頑張って早く帰ろう」では1時間も減らない

建設業の時間外労働にも上限規制が適用され、施工管理の残業削減は、努力目標から経営の必須課題になりました(規制の詳細は最新の労働法令を確認してください)。しかし現場でよく見るのは、「ノー残業デー」や「早く帰ろう」の掛け声だけの取り組みです。これで減らないのは、家計の見直しで「節約しよう」とだけ唱えるのに似ています。

減らす前に、何に使っているかを知る。この記事では、残業の内訳を仕分ける「時間の家計簿」から始め、費目別に効く10の工夫を紹介します。

まず2週間、時間の家計簿をつける

やり方は簡単です。2週間、終業時に5分だけ、その日の残業の中身をざっくり4費目に仕分けて記録します。

  • 書類: 写真整理、日報・報告書、計画書・安全書類、請求関係
  • 移動: 現場間の移動、会社への帰社、確認のためだけの現場往復
  • 調整: 打ち合わせ、電話、問い合わせ対応、決めごと待ちの待機
  • 手戻り: やり直し、是正対応、トラブル処理

施工管理者数名で2週間つければ、自社の残業の「大口費目」が見えます。多くの会社で書類と移動が過半を占めますが、思い込みと違う結果が出ることも珍しくありません。対策は、大口から順に打つ。これが家計簿方式の鉄則です。

費目1「書類」に効く工夫

  1. 写真は撮影時に整理を終わらせる: 写真整理の残業は、電子黒板と撮影計画で工程ごと消せます。月20時間超の削減事例もある、最初に手を付けるべき定番です
  2. 書類の下書きをAIに任せる: 施工計画書や指示書・議事録などの文章仕事は、下書きと検証の分担で時間が半分になります
  3. 「作らない書類」を決める: 社内だけの資料で、誰も読んでいないものはないか。書類の断捨離は、年に一度、提出先ごとに棚卸しする価値があります

費目2「移動」に効く工夫

  1. 遠隔で分かる状態を作る: 定点写真のクラウド共有で「行かなくても分かる」を増やし、行く日は検査と調整に集中する。移動月35時間減の事例の型です
  2. 直行直帰を原則にする: 帰社の目的が書類とハンコなら、クラウド化とセットで直行直帰に切り替えます
  3. 会議をオンライン併用にする: 定例のための往復1時間は、画面共有で置き換えられるものが少なくありません

費目3「調整」に効く工夫

  1. 決めごとの期限管理で「待ち」をなくす: 調整の残業の正体は、決まらないことの追いかけです。発注者定例の3点セット決定期限の逆算提示で、追いかける側から期限を切る側に回ります
  2. 電話を減らし、記録が残る連絡に寄せる: 電話は割り込みで時間を砕きます。定型連絡はチャット・写真共有に移し、電話は緊急と交渉に限定する。現場との電話が減った事例のとおり、これは相手の時間も守ります
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費目4「手戻り」に効く工夫

  1. 検査の前倒しで竣工前の山を崩す: 竣工前の是正残業は、工区検査方式で工期全体に分散できます
  2. 受け渡しの条件を線にする: 手戻りの多くは職種間の受け渡し不良です。検査ポイントを工程に埋め込むことが、結局は残業対策になります

家計簿の読み方: ある担当者の2週間の例

イメージを持ってもらうため、架空の担当者(2現場掛け持ち・2週間の残業22時間)の家計簿の集計例を示します。

  • 書類: 9時間(写真整理4、日報・報告3、請求資料2)
  • 移動: 6時間(帰社しての事務2、確認のための往復4)
  • 調整: 4時間(電話対応2、決定待ちの手待ちと催促2)
  • 手戻り: 3時間(是正の立ち会いと再検査)

この内訳が見えた瞬間、打ち手の順番は明白になります。最大費目の写真整理は撮影時整理へ、確認のための往復は写真共有へ。この2つだけで週5時間、月20時間の圧縮が射程に入ります。一方で、掛け声だけの「早く帰ろう」がこの表のどこにも作用しないことも、見て取れるはずです。

注意点は、家計簿を人事評価に使わないことです。正直に書いた内訳が査定に響くと分かれば、翌週から記録は化粧されます。目的は個人の査定ではなく、会社の時間の使い道の診断だと、始める前に明言してください。

3か月の進め方: 個人→現場→会社の順で

取り組みの展開は、レイヤーを分けて3か月で設計すると現実的です。

  • 1か月目(個人): 家計簿の記録と、個人でできる工夫(撮影時整理・AI下書き・電話のチャット化)の着手
  • 2か月目(現場): 現場単位の運用変更。検査の前倒し、週間工程での受け渡し明確化、定例会議のアジェンダ固定
  • 3か月目(会社): 集計結果を経営会議へ。構造残業(配置・工期・育成)の議論と、来期の受注・配置方針への反映

個人の工夫で2〜3割、現場の運用で2〜3割、残りは経営の構造判断。この配分感覚を共有しておくと、「現場の努力不足」という誤った総括を避けられます。

個人の工夫では消えない「構造残業」

10の工夫は効きますが、正直に言えば、個人の工夫だけでは消えない残業があります。それは配置と受注の構造から来る残業です。

  • 管理者1人あたりの担当物件数が多すぎる(稼働の物差しなき受注)
  • 無理な工期で受けた案件の突貫
  • 人が育っておらず、特定の人に業務が集中する(任せ方のはしごの不在)

これらは経営判断の領域です。時間の家計簿を会社として集計すると、「個人の工夫で削れる残業」と「経営が変えるべき構造」の境界が数字で見えてきます。残業削減の取り組みが現場への圧力だけで終わる会社と、受注・配置・育成まで踏み込む会社。数年後の採用力と定着率の差は、ここから生まれます。

家計簿は四半期の定点観測にする

2週間の家計簿は診断の道具ですが、一度きりで終わらせるのはもったいない。四半期に一度、同じ4費目で1週間だけ記録を取る定点観測にすると、対策の効果測定と、新しい時間泥棒の検知が同時にできます。

「写真整理は消えたが、今度は問い合わせ対応が膨らんでいる」「新しい報告様式が増えて書類が戻ってきた」。業務は生き物であり、削っても別の場所から時間は食われます。年4回・1週間の軽い観測が、いたちごっこに先手を打つ唯一の方法です。集計は費目別の合計だけでよく、凝った分析は要りません。続くことが精度に勝ります。

なお、休日出勤は残業とは別枠で数えることをおすすめします。平日の残業が減っても休日対応に染み出しているなら、それは削減ではなく移動です。総労働時間で見る癖をつけると、見せかけの改善に騙されません。

削った時間の「使い道」を先に決めておく

最後に、見落とされがちな論点をひとつ。残業を減らす目的が「早く帰る」だけだと、繁忙が戻った瞬間に元に戻ります。効果が持続する会社は、削った時間の使い道を決めています。検査と巡回の充実、若手の指導、資格の勉強、そして家に帰る。時間は空けるものではなく、振り替えるもの。この位置づけが、削減の取り組みを「我慢」から「投資」に変えます。

まとめ

施工管理の残業削減は、時間の家計簿で大口費目を特定し、書類・移動・調整・手戻りの費目別に工夫を当て、個人で消えない構造残業は経営が引き取る、という順序で進めます。掛け声より家計簿。精神論より費目別対策。残業は「減らすもの」である前に「測るもの」です。

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